海外EC調査部

中間層を狙った価格帯に特化 アメリカのECプラットフォームWish(ウィッシュ)

海外EC調査部2021-09-07

2022.04.06 改定

Wishとは

Wishは、2010年にサンフランシスコで、元Googleエンジニアのピーター・シュルチェフスキーによって設立されたECです。

現在50万以上のセラーが登録しており、2020年の月間アクティブユーザーは6,000万人、売上高は3,200億円となっています。

Wishの大きな特徴は「EC利用が浸透していない中間所得者層をターゲットにした価格帯」です。

Wishのターゲットとその背景

創業者のピーター・シュルチェフスキー氏は、世界にはまだまだECが浸透していない層がいることに目をつけました。
それが「中間(所得者)層」です。

日本通商白書(2013年)は、「1世帯の年間可処分所得が5,000〜3万5,000ドル」を「中間層」と定義している。
中間層の中でも、更に細かく層が分かれており、下位の1世帯の1日の消費額は13.7〜41ドル程度です。

1世帯が4人であった場合、1人あたりの1日の消費額は、3.4〜10ドルほど(約370〜1,100円)です。

日本でもおなじみ、AmazonなどのECサイトは、富裕層や上位の中間層をターゲットにした価格帯なのです。

シュルチェフスキー氏は、世界にはEC利用を出来ず取り残された所得者層の人々がいることに着目し、ターゲットにしたというわけです。

上の図は、世界のエリア別に中間層の消費の割合をグラフ化したものです。
今後、アジアやインドの中間層が大幅に増加する予測となっています。(下部茶色、オレンジ色部分を参照)

2030年までには、全世界で中間層の人口は30億人に達するとも予想されています。
(出典・参照:https://www.dni.gov/files/documents/GlobalTrends_2030.pdf#page=30

この予測からも、Wishが狙うターゲット層がますます消費行動の中心になっていく事がわかります。

Wishのアルゴリズム ― レコメンデーションによるおすすめ機能

Wishはレコメンデーション、所謂「顧客へのおすすめ機能」を用いてショッピングを促す「偶然の出会い」型設計です。

この長所は、ユーザーが検索の労力を費やすこと無く自然と自分好みの商品へ辿り着き、多くの商品を閲覧できる事です。
レコメンデーションにより、Wishのユーザーは「1日あたり500以上の商品情報を目にし、平均9分以上サイトに滞在する」というデータもあります。
情報過多の現代において、自分好みの商品を探し出すことに手間を感じる人々も多く、そう言ったユーザー層にマッチしたシステムです。

安さの理由

(引用:Wishのレディース服検索画面。とにかく安い…)

一目で取り扱い商品の値段の安さがわかる一覧ですが、安さの理由は何なのでしょうか。
考えられる理由は以下の通りです。

①中国のメーカーなどから直送された商品の販売

中間業者を通さない分、コストが抑えられ安く提供することができます。
また中国の大量生産・ローコストの生産体制のノウハウから、値段も抑えられています。

②ノーブランド品の販売

ブランド性より安さを優先したい消費者のニーズと合致しています。

利用時の注意点

wishの利用には「発送期間を要する」という事を頭に入れておきましょう。

海外から発送という点を含めても、安く手に入れられれば日数は多少かかっても良いというのがセオリーのようです。
いつまで待てばいいのか…と不安になりますが、wishは加盟店が発送した商品に過度な遅延が発生した場合、返金とその費用を100%加盟店側で負担するというポリシーがあります。

一覧には日本も掲載されており、13日との規定があります。

これからのwish 「安かろう悪かろう」からの脱却

最近のwishの大きな変化として、審査の無かった新規セラー登録を招待制にした事があげられます。
これにより、申込みフォームの申請から複数の認定プロセスに合格しなければ開店できない仕組みとなりました。

wishの安さは大きな売りではありますが、反面粗悪品が出回ってしまうことや偽ブランド品の横行により、対外イメージが損なわれている部分もあります。

wishがセラーに審査を設けたのもその影響が大きいのではないでしょうか。

(参考:https://www.chargedretail.co.uk/2022/02/04/wish-becomes-an-invite-only-platform-for-new-sellers/

また、WishClipsという没入型体験ショッピングを目的とした新機能をリリース。

簡単に言うと、商品を紹介する動画上で買い物ができるシステムです。

既に多くのECで動画での商品紹介や使用感のアピールは活用されていますが、wishもそこへ追随する形となりそうです。

公式リリースのページでは、実際にスマホ上で流れる動画のサンプルを確認することもできます。

まとめ

wishは安い価格帯商品を武器に、過去ECでのショッピング経験の無かった層を新たに開拓しました。商品に関するトラブル―粗悪品や偽ブランドの扱いなども、2022年2月からは新規セラー参入に審査をかけることで、出店側の質を高める取り組みを始めています。

また動画内での商品紹介からそのまま購入へ進められるWishClipsは、新しいwishの取り組みとしては一部に過ぎず、今後も新しいサービス展開をしていくとの宣言もされています。

現在まで獲得した客層を維持しつつ、質の良い店舗を集め、イメージを変えつつあるwishに今後も期待できそうです。

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