グリーン・リカバリーとリユースの未来
Reuse for the Future2021-09-08
グリーンリカバリーとは何か?
グリーンリカバリーとは、「コロナ禍からの経済復興にあたり、脱炭素社会や環境問題の取り組みを含めた施策でよりサステナブルな未来を目指す」という経済刺激策である。
これは国内に限った流れではない。
コロナ禍が地球規模の課題である事と同じく、国や地域を越えて広く展開される取り組みである。
コロナ禍からの復興は、コロナ以前の社会に戻るのではなく、コロナによる人々の価値観や社会の変化に柔軟に対応しながら、多様性と包摂性に溢れた、強靭で持続可能な社会を実現する機会である。
2021年8月7日に行われたSustainable Recovery Tokyo Forum(サステナブル・リカバリー東京会議)にて行われた「サステナブル・リカバリー東京宣言(仮訳)」から一部引用
グリーンリカバリーの背景―コロナ禍での生活様式の変化・影響
なぜ今、グリーンリカバリーの必要性が叫ばれているのか。
それは複数の要因と、このコロナ禍に突入したタイミングにも理由がある。
ひとつめは、2020年、まさにコロナ禍に突入した年は、元々SDGsアクションプラン2020によるSDGs「行動の10年」スタートの年だったからである。
国連において、SDGsの達成の目標年は2030年と設定されている。
その達成のための行動をより加速させる行動の10年と指定されたのが、2020年だったのだ。
ふたつめは、そのSDGs「行動の10年」スタートの年にコロナ禍に突入したことである。
複数の国々では、人流の制限のために都市封鎖、いわゆるロックダウンが行われた。
このロックダウンにより、大気汚染が急激に改善されたというデータがある。
(参考:大気環境がロックダウンで改善、世界の84%)
日本ではそもそもロックダウンという施策は取られていないため、イメージは為難いかもしれない。
だが、奇しくもSDGs「行動の10年」スタートと同時に、意図せず汚染軽減という結果が出たという事になる。
コロナ禍の今でなければ、このような大規模な制限を複数の国々が同時に行うという事は、実行困難だっただろう。
また、コロナ禍による雇用の損失により、世界の貧困を加速させる可能性も問題視されている。
この結果とSDGs「行動の10年」の開始により、各国がバラバラに経済回復を図るのではなく、地球規模での経済復興をSDGs(持続可能な開発目標)と同時に行うという流れが生まれたのだ。
SDGsへの取り組みとコロナ禍からの経済復興は、互いに切り離せない関係であると言える。
リユースの未来と深く関わるグリーン・リカバリー
2020年8月に発表された、英国気候変動委員会のグリーンリカバリーに向けた政策提言の中に、早急に実施すべき5つの投資優先順位としてこのような記載がある。
1.建築物の低炭素化
2.植林や泥炭地の回復、クリーンインフラ構築
3.交通や暖房システムの電動化支援を通じて、エネルギーネットワークを強化する
4.徒歩やサイクリング、リモートワークのためのインフラ構築
5.サーキュラーエコノミーへの移行
【引用元】英国気候変動委員会、グリーンリカバリーに向けた政策提言を発表
サーキュラー・エコノミーへの移行がポイントになるのは、実行のためのシステム構築によりリユースやリサイクルの促進、廃プラスチック問題においても「極力、
[simple_tooltip content=’微生物の働きにより、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質を持ったプラスチックの事。分解され土に還るスピードは環境大きく影響される。’]生分解性プラスチック[/simple_tooltip]
を埋立処分しない事」へ繋がるからである。
下記の図は、サーキュラー・エコノミーの原則を表したバラフライダイアグラムである。
(参考:エレン・マッカーサー財団「サーキュラーエコノミーシステムダイアグラム(バタフライダイアグラム)」日本語訳)
プラスチックに関しても、技術学的サイクル(向かって右半分)に乗り円の中を循環し続ける事で、「埋め立て廃棄」という概念を無くす事が急務である。
過去、本記事でも取り上げたサーキュラー・エコノミーのサイクルは、グリーンリカバリーの中でも非常に重要な位置づけにあることがわかる。
[nlink url=”https://wasabi-inc.biz/2021/05/28/circular-economy01/”]
2020年からスタートしたSDGs「行動の10年」、
コロナ禍で顕著になった、地球規模の環境問題、
人流制限による思わぬ副産物(大気汚染や水質改善など)を今後にどう活かせるのか。
この3点に対しての包括的な取り組みこそが、グリーンリカバリーである。
現在の変容しつつある生活様式や、制限される活動の中で、どれだけ継続していけるのか。
今後一人ひとりの行動変化から、都道府県、国、地域、地球規模あらゆる全ての枠組みにおいて、目指すべき未来のかたちになりつつある。