アフリカのアマゾン、JUMIA(ジュミア)〜アフリカが持つ背景〜
海外EC調査部2021-10-04
今回は、アフリカ大陸で発展を目指す「JUMIA」というECモールに焦点を当てていく。
しかし、日本から遠く離れた土地で文化や背景も大きく異なるため、そのECモールだけを取り上げることは難しいだろう。
そこで、前半にアフリカにおけるデジタル化の現状を、後半ではJUMIAについてを、2編に分けて考察していきたい。
この記事(前半)では主にアフリカについて書くが、はじめに少しだけJUMIAについて触れておく。
世界のローカルECモール
EC業界において世界最大手とも言えるAmazonの名を借り、各エリア・各国で発展するECモールを「〇〇のAmazon」などと例えるケースが多々見受けられる。
以前ここでも扱った、メルカドリブレもその一つだ。
ECやデジタル決済が普及していなかった南米において、メルカドリブレはとても強い存在。
「南米のAmazon」と例えられるのも納得なのである。
[nlink url=”https://wasabi-inc.biz/2022/06/14/mercado-libre/”]
さて、世界の各エリアではどのECモールが思い浮かぶだろう。
北米はAmazonやebay、Walmartなど、世界に名だたる企業が浮かんでくる。
ヨーロッパは上記に加えて、フランスのCarrefour(カルフール)やイギリスのFarfetch(ファーフェッチ)なども挙げられるだろう。
アジアでは中国にアリババグループ傘下の淘宝(タオバオ)や天猫(T-mall)、東南アジアにShopeeやLazada、日本には楽天やYahoo!など、各地列挙していたらキリがないほど多くのECモールが存在する。
しかし、世界地図を大きく見渡した時、上記の地域と比べて、EC普及のイメージがやや薄いエリアはないだろうか。
ロシアやアフリカはどうだろう。中東ではどこのサイトが利用されているのか。
オーストラリアはどうか。
日本で暮らす私たちには耳馴染みのないECモールが、世界には数多く存在する。
今回は中でもアフリカにフォーカスしていきたい。
アフリカは、まだまだインフラの整備が不十分なエリアが多く、ECにおいては輸送や配送、決済面で大きな課題を抱えている地域だ。
そんなアフリカにはどんなECが普及しているのか、実際はどのような状況なのか。
少し覗いてみたいと思う。
JUMIA
2012年に誕生したこのJUMIAは、アフリカの11か国で利用できるECモールだ。
(引用:https://s23.q4cdn.com/836376591/files/doc_presentation/2021/01/Jumia-Needham-conference-January-2021.pdf) 左上から、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、エジプト、セネガル、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、ウガンダ、ケニア、南アフリカ
主要なサービス拠点はアフリカであるが、本社はドイツ、実態はドバイからスタートという変わった経歴を持つ。
このJUMIA、冒頭にあったように「アフリカのAmazon」と表現されることがある。
ではどのようなところが「Amazon的」なのか。
ポテンシャルに溢れるJUMIAとアフリカを詳しく見ていこう。
アフリカのインターネット普及率
まずは、アフリカとはどんなエリアなのか。
一括りにアフリカと言えど、様々な国と地域、民族、文化、気候が入り混じった、非常に広大な大陸だ。
下の図は、世界のインターネット未接続の人の数を表したもの。(単位は100万)
(引用:Digital 2020: 3.8 billion people use social media – We Are Social)
※2020年1月レポート発行時点
アフリカ大陸全土の人口は現在、約13億4000万人。
アフリカでインターネットに接続されていない人々の割合は、世界全体の27%を占める。
これは、アフリカ大陸の8億7000万人がまだインターネットに接続されていない状況。
裏を返せば、4億7000万人(アフリカ人口の約35%)がオンラインのインターネット環境を持っているということになる。
(参照:Digital 2020: 3.8 billion people use social media – We Are Social)
モバイル普及率については、最近手ごろな価格で手に入るスマートフォンが浸透し始めていることもあり、徐々に普及率が高まっている様子。
アフリカは固定回線ブロードバンドの普及率が世界で最も低く、今後のモバイル機器でのインターネット普及が望まれる。
JETROの調べを見てみると、アフリカでは携帯電話の普及率は高いが、そこからインターネットに接続して利用している人の割合はまだまだ低いようだ。
国の人口に対して携帯電話やスマートフォンでインターネットを利用している人の割合が高いのは、南アフリカ・ケニア・ガーナ・コートジボワールの4か国。
これらはJUMIAもカバーしている販売国である。
(参照:https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/2021/d4d0769e5f781076/shiryo2.pdf)
アフリカの決済事情
アフリカでは、銀行口座を持っていない人や、銀行が近くにない人も数多くおり、まだ決済インフラが不十分。
現金は盗まれたり偽造されたりというリスクも高いことや、利便性の面からも、キャッシュレス化に向けての動きが加速しそうだ。取り組みに力を入れている。
世界的な中間層の増加に伴って、アフリカでもモバイル機器の普及はどんどん進んでいる。
これを機に一気にデジタル化に拍車をかけていきたいところであろう。
後編で触れるJUMIAは、独自の決済システム「JumiaPay」を開発・展開している。
以前取り上げた南米のメルカドリブレも、独自の決済フィンテック「メルカドパゴ」のサービス提供で、地域全体のキャッシュレス化が進み、メルカドリブレ自身の人気を確立したと言っても過言ではない。
アフリカもこの例に倣うのか、これからの展開に期待である。
また、アフリカではケニアの企業、サファリコムが開発した「M-PESA(エムペサ)」という決済システムもかなり浸透しつつある。
M-PESAはSMSを利用したシンプルな決済システムで、最低限の設備で簡単に決済や送金が行えるのだ。
JETROによれば、アフリカにおけるスマートフォンの普及率は今後もじわじわと伸びていく模様。
現在は都市部に住む人々や若者が主なスマホユーザーのようだが、これが全世代に幅広く浸透すれば、さらに決済や送金などの方法に選択肢が広がり、デジタル化の定着へと繋がることだろう。
インフラを整えることは、アフリカの経済成長の基盤を作るということ。
様々な企業が日々試行錯誤をする中で、どの企業が成長し、アフリカの経済発展を牽引していくのか、今後も目が離せない状況だ。
(参照:https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/2021/d4d0769e5f781076/shiryo2.pdf PDFファイルダウンロード)
アフリカの人口増加と急がれるインフラ整備
上述のように、2020年時点で約13億4000万人の人口を有するアフリカ。
2050年には約25億人、2100年にはおよそ42.8億人にまで増加すると見込まれている。
(参照:http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2020.asp?fname=T02-11.htm)
単純に人口の増加、中間層の増加と聞くと、まさに「ブルーオーシャン」や「新規顧客獲得のチャンス」といった連想をしてしまいがちだが、今のままで爆発的な人口増加が起きてしまうと、深刻な問題となる。
この急速な人口増加に経済の成長が追いつかなければ、十分な雇用を生み出せず、1人あたりの所得は減り、食糧も不足、さらに貧困層を増やしてしまう可能性もあるのだ。
まさに、今後30年に渡って、アフリカではインフラ整備と人口増加の壮絶な追いかけっこが繰り広げられるだろう。
これは、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」社会を創っていくための、SDGsに対する課題でもある。
まとめ
ここまで、アフリカのEC事情を理解していくために必要な情報を断片的にではあるが紹介してきた。
ただ、ここに挙げたものは氷山の一角に過ぎず、アフリカが直面している課題はこれだけではない。
ぜひSDGsの観点でもアフリカの現状を見つめてみて欲しい。
次回はこの背景をもとに、アフリカのECモール「JUMIA」について触れる。