鑑定システムで成長する得物(POIZON / ポイズン)
海外EC調査部2021-11-10
目次
得物(以下、POIZON/ポイズン)の由来と歴史
POIZONはスニーカーを始めとしたファッション・ガジェットアイテムを扱うECです。
POIZON誕生の起源は「虎扑」(以下フープー)という中国の最大のスポーツ関係掲示板まで遡ります。
この掲示板は、バスケットボール、ファッション、スポーツシューズ分野で大きな影響力を持っています。フープーでは、ユーザーがそれぞれ持ち寄ったスニーカーの販売情報を交換したり、新品や中古を鑑定し合ったりしていました。
もちろん「利用者同士が情報を共有する掲示板」なので、販売サービスを提供するような場ではありませんでした。鑑定も有志の行為であり、正式なサービスではありませんでした。
また中国には、世界の各ブランド品の工場が多数存在します。
そのため、ノウハウが偽ブランド品の生産へ転用されるケースも多く、マーケットでは偽ブランド品問題が常態化していました。近年はタオバオでも監視の目が厳しくなり、以前と比較すれば偽ブランド品は減少傾向にあります。
それでも高価な商品や限定品などは、一般ユーザーからすると判別が難しい場合もあり、完全に取り締まる事は難しい状態です。そこで2015年に登場したアプリが、鑑定サービスつきの「得物(POIZON/ポイズン)」です。
同じくスニーカー売買プラットホームのStockX(アメリカ)も広く認知されていますが、ポイズンはそれより1年早い2015年からサービスを開始しました。
最近では高級な装飾品類やレディースファッション・化粧品など、スニーカー以外のジャンルの取り扱いも増えつつあります。
ポイズンのネーミング由来
本来のアプリ名は、毒(デゥー)でした。
麻薬のように中毒してクセになって抜け出せないほど夢中になってしまう…という意味なのですが、印象は良くない由来と響きです。
その上、近年「スニーカー投資」について世間から批判の声が上がった事もあり、2020年、名前は得物(デゥー)に改名をしました。(※ポイズンという呼び名は変わらず)
単語としての意味は「物を得る」となり、健全な印象を与えるよう意識されています。
現在の状況
「スニーカーへの投資」文化は、中国の少数の大都市の流行から始まり、今では全国の若年層世代へ広まりつつあります。
靴本来の実用性と言うよりは、「限定品」などの希少価値のある商品への関心が高まり、スニーカーを不動産のような投資として捉える人々が増加したのです。
もはやスニーカーは「金融商品」というわけです。
この流れに押され、アプリは驚異的なスピードで発展を遂げました。
2020年の上海百強成長企業ではトップに選ばれ、今後さらに成長していく見込みです。
売上について
ポイズンは中国最大のスニーカープラットホームとなっています。
2020年2月には累計鑑定数(出品数)が4,700万回を突破、2019年にはGMVは10億ドルに達し、2020年には月間ユーザーは4000万人に達しました。
(参考:https://xw.qq.com/cmsid/20210421A0DAXQ00)
ユーザー数
2020年9月16日人民網によると、若者の3人のうち1人がこのアプリを利用している計算になります。
年齢別に見ると、利用者のうちECの主力となる二十代の割合が75%を超えています。
また、利用者の男女比はほぼ1:1、男女半々となってります。
メインサービスと取り扱い商品
ポインズンのメインサービスは、スポーツ用品などの販売と商品に関するコミュニティです。
扱う商品はスニーカー以外にもストリートブランド服、時計、腕時計、アクセサリーなどのファッション全般から、デジタル製品、家電、化粧品、カー用品なども扱っています。
商品の種類の増加と共に、女性の利用者数も増える傾向にあります。
中国国内でスニーカーやブランド品、ファッション製品の購入と言えば真っ先に選択肢に上がるような存在です。
またポイズンアプリでは、多くの一流ブランドや国際ブランドが出店しています。
例えば、COACH、New Balance、casio、Champion、ファーウェイ、Dji、Dyson、Beats、LV 、Dior 、FEND・・など様々です。
独自の仕組み
鑑定システム
ポイズンは、商品を鑑定システムに通すことで、ユーザーから大きな信頼を得ています。
商品取引において鑑定システムの「真偽鑑別」、「瑕疵(かし)検査」などの段階を増やすことによって、取引中に各種の手数料が上乗せされます。
個人での出品には、販売手数料5%と振込手数料1%の他、鑑定や商品の包装などの倉庫操作費用860円が取引毎に発生します。
また法人アカウントには保証金が必要です。
ポイズンは日本国内にも倉庫を所持しているため、出品鑑定の際には国内の指定倉庫へ送付します。(※日本倉庫への発送料はユーザー負担)
個⼈アカウントでの取引の場合、Paypalによる海外送金のため、Paypal手数料が発生する場合もあります。万が一、ポイズン側の過失により偽物を購入してしまった場合には、支払い価格の3倍の賠償金が支払われます。
しかしこういった事態はほぼゼロに等しく、正確な鑑定技術がPOISONの信頼の証となっています。
また2020年には、「中国検験認証集団有限公司」(中国の中央鑑定企業)と連携。
「スニーカーの共通鑑定要求と判定方法」をリリースしました。
これは中国国内初のシューズ類を対象とする鑑定基準で、鑑定基準について規範を示したものです。
その他、包装、出荷の速さなど、ユーザーの満足度を上げるために最善を尽くしています。
特に販売する側の管理は徹底されており、決められた時間内に発送・出荷をしないと罰金が課せられてしまいます。
価格の参照
ポイズンでは、株価チャートのように商品の価格動向を確認する事ができます。
高価で希少なスニーカーを扱うユーザーにとっては、非常に重要な機能です。
気になる商品の値段が上下した時には、通知で確認をすることもできます。
instgramのようなコミュニティ機能
いわゆるインスタグラムのようなSNS機能があり、ユーザー同士で意見をシェアしたりコメントを残す事ができます。
動画のアップロードやライブ配信、ライブ配信型ネット販売やイベントなど、機能は様々です。
近年、bilibili(中国のyoutubeのような動画サイト)では、スニーカー紹介の動画が流行しており、ネット上で影響力のあるインフルエンサーが頻繁にライブ配信型ネット販売を行っています。
新機能・スニーカーの3Dビュー
3D機能でスニーカーを360度確認したり、バーチャル上の試着など若い世代向けの新機能がついています。
レアで高価の商品(スニーカー)は、実際に試着したり目で見て確認する機会もなかなかありません。
特にここ数年はコロナの影響もあり、ユーザーから好評の機能です。
利用者の特徴
「ブランド」「限定品」第一の傾向です。
ネットで知名度のあるインフルエンサーや芸能人・著名人の影響が大きく、国内の情報源メインです。
(※中国ではyoutube、instgramなどの中国国外のサイトを閲覧制限しているため、特に中国国内のサイトの情報がメイン)
日本からの出店方法
法人・個人、海外からの発送も可能です。
ただし、いくつかの条件を満たす必要があります。
条件は以下の通りです。
・中国の携帯電話
・中国での身分証明証
・中国の住所
日本から出品自体は可能ですが、日本国内での身分証明書だけでは販売は出来ません。
逆を言えば、中国の身分証明書を所持している「日本在住の中国人利用者」も多く存在するということです。
発送について
出店後、商品の発送方法は二通りあります。
・受注後、商品をプラットフォームへ郵送し、鑑定と注文者への発送を依頼する ・事前にプラットフォームの倉庫へ郵送して、保管してもらい、35日間以内に注文が入ればプラットフォームから注文者へ発送する。
受注後の商品発送は郵送から発送到着にまでに時間を要すため、事前に倉庫へ商品を郵送する形は注文者側からはメリットがあります。
販売側からすると、保管されている商品が売れずに35日を過ぎてしまうと、保管料金が発生し損失となります。