海外EC調査部

アメリカ発のリセールEC ThredUP(スレッドアップ)

海外EC調査部2021-11-16

概要

ThredUP(以下スレッドアップ)はアメリカのアパレルリセールプラットホーム大手です。
スレッドアップは創業からこの10年間で急成長し、アパレルリセールという概念を再定義しました。

2009年、創業者James Reinhart(ジェームス・ラインハート)は自分の不要な衣服が積み上げられた洋服ダンスを見て、この煩雑さに価値があるかもしれないという一瞬のひらめきがありました。
そして、これをきっかけにスレッドアップを起業しました。

起業初期は子供服限定で扱っていました。
「子供は成長するが、衣服は成長しない。」というキャッチフレーズを中心に宣伝し、ビジネスは成長。
2013年、女性服の取り扱いを始めました。
2017年、実店舗も開業し、新しい買い物体験を提供し始めました。
2021年3月26日、スレッドアップがNASDAQに新規上場しました。

スレッドアップ2021年の財務報告によると、2021年度の売上予測は2.36~2.41億ドルとなっています。
2020年12月31日を時点に、124万人のアクティブユーザーがスレッドアップを利用しています。

ビジネスモデル

(引用:https://www.thredup.com/cleanout, https://thredup-newsroom.squarespace.com/media-assets スレッドアップのClean Out Kit)

中古アパレル売買の手間を減らすために、販売希望のユーザーにClean Out Kit(100%再生可能のビニール袋)を先に送ります。
しかも、スレッドアップがFedexとUPSを連携して全ての郵送費を負担します。
販売依頼のあった衣服が流通センターに到着してから、自動化したシステムを利用した効率的な工程を経て、自社の販売サイトに出品します。
商品販売の営業活動やカスタマーサービスなどは全てスレッドアップが行っています。

ブランドによって、依頼商品の販売期限があります(普通ブランド60日、高級ブランド90日)。
もし未販売のまま期限が過ぎたら、ユーザーへ返還、又はそのまま寄付という二つの方法があります。

(引用:https://www.thredup.com/cleanout/payouts 支払い額表

商品が買われた場合には、最終販売価格の一部分(上の表によって、支払い額が違います)を売り手に払います。

サステナブル(持続可能)なファッション

Green Story Inc. (環境に関するデータについてコンサルタントを提供する顧問会社)とEllen MacArthur Foundationによれば、近年毎年およそ一兆枚の衣服が生産されています。
新しい衣服一枚を生産するには、およそ77ガロン(=約350リットル)水が必要で、17ポンド(=約7.7キログラム)の二酸化炭素を排出します。
これは年間に換算すると、環境に膨大な影響を及ぼす数値です。

しかし、環境問題はスレッドアップにとってはむしろチャンスとも言えるのです。
創業から10年間、消費者の行動に変化を呼びかけ、買い物する前に環境への影響と高品質の消費をともに考える新しい消費行動を促しています。
そして、厳しい出品基準によって、新品とほぼ同じ質の商品が提供できます。

(引用:https://www.modernretail.co/retailers/in-effort-to-scale-thredup-pitches-services-business-to-retailers/ パッケージにもこだわり、手元に商品が届いた時の喜びが新品同様となるよう気を配ったサービスを提供しています)

GAP(ギャップ)やAdidas(アディダス)なとの環境に熱心のアパレルブランドを連携して、RAAS(Resale-As-A-Service:リセールをサービスとする)というキャンペーンも行っています。
売り手がこのRAASを利用して、該当するブランドの衣服をスレッドアップで売ると、そのブランドの買い物ポイントや割引券などを手に入れられます。

スレッドアップはリユースアイテムの販売以外にも、環境に関連する社会活動にも活躍しています。
有名人と手を組んだり、小売販売店と連携したりして持続なファッションを宣伝することも、社会の注目を集めました。
2018年、Burberry(バーバリー)が価値3780万ドル(約43億円)の過剰在庫を焼却したことをニュースで報道されました。
これについて、スレッドアップが環境に無責任なやり方を責めて、公開状をバーバリーへ送付しています。
この行動は、FortuneInStyleFashionistaなどのメディアから注目を集めました。
企業の広告行為とも言えますが、こう言った行動も環境への関心を呼びかけも、大企業の責任だと思います。

(引用:https://www.thredup.com/bg/p/shop-secondhand-first?tswc_redir=true バーバリーへの公開状

効率化したオンラインリユース販売システム

現代的なリユース販売システムを目指し、スレッドアップは様々な分野の専門家(インフラエンジニア、ソフトエンジニア、データサイエンティスト等)を雇っています。
売り手から買い手まで商品の扱い方を前提に、効率的な運行システムを作りました。

(引用:https://vimeo.com/477244725/2c0df680d0 流通分配センター  )

アメリカで戦略的に建てられた三つの流通分配センターは、毎日10万件の商品を処理できます。
QR codeやAIを活用した自動化によって、複雑だったリユース販売工程が一変し、簡単なプロセスになりました。

また2016年、スレッドアップはウクライナのキエフでデータ分析センターを設立。
このセンターが膨大なデータベースを利用して、リユース販売についての全てのデータを分析し、より合理的な運行を貢献しています。

(引用:https://www.thredup.com/resale/static/thredUP-Resale-and-Impact-Report-2021-980436a36adc4f84a26675c1fcf2c554.pdf スレッドアップが発表した年度リセールレポート

毎年、スレッドアップがアパレル産業についての調査や分析を含めた年度リセールレポートを発表しています。
このような専門的なリポートもデータ活用のおかげでしょう。

日本からの出品について

スレッドアップによると、サービスがアメリカとカナダのみで提供されています。
残念ながら、日本からの購入も出品もできません。

スレッドアップは北アメリカの市場を固めつつ、海外進出も進めています。
2021年8月、スレッドアップが欧州で最大手のファッションリセール企業のひとつ、リミックス・グローバルAD(Remix Global AD)を買収しました。
アジアへの海外進出の計画は無く、日本の中古アパレル業界との連携は暫くは無さそうです。

スレッドアップのようなハイテクを活用し、持続可能なファッションを宣伝し効率的な運用を行っている会社は、まさにアパレルリユース業界の模範生です。
日本のリユース業界にとっても良い参考になりそうです。

結論

今月2021年11月、COP26(Conference of the Parties:国連気候変動枠組条約締約国会議)がイギリスで開催されました。
各国は環境問題への関心は過去最高の高い水準になったと見られています。
このトレンドが続けば、各企業が今後の方針を変えなければ、時代遅れになるかもしれません。
もともと持続的な体質を持つ中古業界にとってはいいチャンスだと思います。
少子高齢化による人手不足や資金面の問題などの客観的なハードルがありますが、このチャンスを逃さず、より機能的・効率的な運営を目指す機会となる
のではないでしょうか。

SEARCH

ARCHIVES