Reuse for the Future

廃棄した古着は最後どうなる? ー「おしゃれな」ファストファッション産業の裏にある汚染問題 後編

Reuse for the Future2021-12-27

前半で述べたように、「速さ」という特質を持つファストファッションが我々の地球環境を「速く」ダメージを与えています。
このまま続けば、不可逆な破壊に至るかもしれません。
では、今の人々の衣料品に対する需要を満足しつつ環境への影響を最大限控える解決方法はあるのでしょうか?

その答えは、リサイクルという形式です。

生産過程のリサイクル

理想論として考えると、全ての衣料品の廃棄物を分解して、新しい材料に再生するのが一番良い解決策です。
しかし残念ながら、理想的な再利用循環は完璧な円が人間の意識にしか存在しないように、現実世界では不可能です。

H&Mやユニクロのような大手企業が自社のリサイクルプログラムがありますが、リサイクルの技術限界やコストのため、再利用できる割合がかなり低いです。
普通の衣料品の繊維が加工や着用によって擦り切れたり、短くなったりして、もともとの形に回復できない状態になります。
再利用する際に、一定の質を保つために、古着から分解された繊維に新しい繊維を混ぜる必要があります。
しかも、その新しい繊維の割合がかなり高いのです。
いまの市販のブランドが宣伝している再生綿などの材料はほとんどこのように作られています。

(ある繊維リサイクル工場の一角。引用:https://www.azcentral.com/story/news/local/chandler/2017/11/14/chandler-companies-phoenix-fibers-bonded-logic-recycle-old-clothes/737960001/

他に、古着の繊維が別の製品、例えばカーペットやマットなどの材料にするリサイクル会社もあります。
上に述べた必要の量に入っていない、使わなくなった繊維が最後焼却処分され、埋め立てごみになっています。
その割合は87%で、かなり高いです。

この問題を改善するため、さまざまな取り組みが進行中です。

Ellen MacArthurのような団体が​​世界銀行のConnect4Climateプログラムとともに活動して、ファストファッション産業の変革を求めています。
具体的には、再生率の高い材料の利用を中心として新たな技術の開発や普及を呼びかけています。

生産者もいろいろな新材料の開発を模索しています。
海に捨てられたプラスチックを加工し、スニーカーの材料にしたり、化学材料を魚の皮や天然染料に取り替えたりするさまざまな取り組みがあります。

(Nike Air Vapor Max 2020 Flyknit sneakers。50%の材料がプラスチックなどを再利用して作られています。引用:https://global-fashion-group.com/2020/09/01/lamoda-introduces-eco-friendly-nike-air-sneakers/

しかしながら、このような取り組みはごく僅かで、ほとんどのファストファッション衣料品が以前の通りに生産されています。

流通過程のリサイクル

上で述べた生産過程のリサイクルの他、もう一つ重要なリサイクル形式があります。
それは流通過程のリサイクルということです。

だれかにとっての不用品の古着が他のだれかにとって必要なものになるかもしれません。
こういった供給と需要の架け橋になったのは古着販売業界です。

再生産段階に入らず、つまり環境に「汚染ゼロ」で、直接もう一度流通するのが一番のメリットです。
ThredUp(スレッドアップ)Poshmar(ポッシュマーク)などの古着リセールプラットフォームに通じて、大量な古着がリサイクルされています。

(スレッドアップの流通センタ。引用:https://newsroom.thredup.com/

スレッドアップによると、2024年で全世界のアパレルリセールの市場規模は640億ドル(約7.27兆円)になると予測されています。

近年、気候変動を原因と見られている災害が頻発し、メディアを通じてたくさんの人々が環境への意識を変えつつあります。
各国政府も環境への関心を高めています。
この背景の中で、古着リサイクル業界に入る企業が今後も徐々に増えると見られています。
この傾向は、もちろん地球環境にとっていいことに間違いありません。

まとめ

産業革命の先頭として輝いていた織物産業は今も人々の日常生活や経済発展に重要な地位をしめています。
この産業の代表部門としてのファストファッションがおよそ240億ドル(約2.73兆円)の市場規模を持ち、全世界でおよそ7,500万人の従業員を雇用しています。
こんなに重要な部門でのわずかな変化も、社会に影響を与えられます。

環境に優しい取り組みを実施すれば、必ずコストが上昇し、企業が利益に関して妥協しなければ、上昇した額が最終製品の値上がりになり、商品の質も下がるかもしれません。
しかし、そうしなければ環境破壊は止められません。
この問題は、複雑な人類社会の複雑なジレンマです。

未来世代のために、企業としても、個人としても、変化にチャレンジし続けなければなりません。


参考記事

Fast Fashion Is Creating an Environmental Crisis
https://www.newsweek.com/2016/09/09/old-clothes-fashion-waste-crisis-494824.html

How Much Do Our Wardrobes Cost to the Environment?
https://www.worldbank.org/en/news/feature/2019/09/23/costo-moda-medio-ambiente

How Fast Fashion Hurts the Planet
https://www.businessinsider.com/fast-fashion-environmental-impact-pollution-emissions-waste-water-2019-10#clothing-production-has-roughly-doubled-since-2000-1

The Impact of Clothing Waste
https://kleiderly.com/blogs/kleiderly-magazine/the-impact-of-clothing-waste

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