海外EC調査部

書籍の扱いから始まったデジタル帝国 Amazon

海外EC調査部2022-02-16

概要

Amazon(以下アマゾン)といえば、知らない人は多分いないでしょう。
Apple、Google、Microsoft、Facebookとともに、Big Five(五つの超大手テック会社)と呼ばれています。
2022年1月時点で、創業者のジェフ・ベゾスは2,010億ドルの保有資産で、Forbes(フォーブス)の世界長者番付の一位を占めています。

収益と市場占有率から見ると、アマゾンは世界で一番大きいオンラインマーケットプレイスです。
2022年2月時点で200以上の地域でサービス展開し商品を届けています。
2021年9月31日まで過去12ヶ月の収益は4,579.65億ドルとなり、前年と比べて31.62%増加しています。
アマゾンには、億単位のアクティブユーザーがおり、その中の2億人がAmazon Prime(アマゾンの有料会員)を利用しています。

マーケットプレイスを提供するだけではなく、アマゾン自社も小売をしています。アマゾンのオンライン小売業務がいつもGMV(流通取引総額)の中で約40%の割合を維持しています。2021年、アマゾンがWalmart(ウォルマート)を超えて、(中国市場以外の)世界最大の小売業者になりました。

オンライン書店からデジタル帝国への道

なぜ書店?なぜ「アマゾン」という名前?

アマゾンの創立前、ベゾスはウォールストリートのある投資会社の会社員でした。
当時、インターネットとパソコンが企業や個人の間で急速に普及していました。
彼の仕事は、データに基づいてIT企業を分析し、そして投資することでした。
業務の中で、ベゾスがインターネット、特にECの巨大なポテンシャルに気づき、1994年に報酬がいい仕事をやめて起業を決めました。

同年6月、ベゾスは自宅のガレージの中でアマゾンというオンライン書店を創立しました。
しかし、他に本より売れる商品がたくさんあるのに、なぜ本を選んだのか?
あるインタビューで、ベゾスがこう答えました。
「本はとても特別な商品で、ネット販売に一番いい商品だと思います。全ての商品の中で、本のカテゴリが一番多いです。なので、取り扱うのも一番難しいです。もしできたら、そのシステムは唯一無二の存在になるかもしれません。」

会社の名前は南米のアマゾン川に由来します。
アマゾン川は世界最大で最長の河川ですので、ベゾスも世界最大のオンライン書店という「知識の川」を作りたい思いをこめて、会社を「アマゾン」と名付けました。

(今のサイトと比べてまるで別物のような1995年のアマゾンサイト。引用:https://www.versionmuseum.com/history-of/amazon-website

そして、本の販売にはもう一つの特徴があります。
それは、本を上手く売るには顧客の趣味や好みなどを知らなければならないことです。
そのために、顧客の消費行為に関するデータという情報を集めて分析することが商売の切り札になります
商売にとってデータの重要さを誰よりも早くて深く実感した経験は、後のアマゾンのデジタル制覇への扉を開きました。

Amazon Primeと大型流通センター

アマゾンでの膨大な品揃えや一般の書店より安い価格(当時ネットで本を買うときには、消費税が免除されています)などのお陰で、大人気になりました。
1997年上場してから、拡張が始まりました。

1998年から、本以外の商品を取り扱い始めました。
そして、他の小売業者をアマゾンに招待し、自社の通販サイトからオンライン小売プラットフォームに重要な転換をしました。
数多くの大手ブランドストアや個人事業者がアマゾンで店を開くことになりました。

2005年、アマゾンがそれからの発展にとってとても重要な一歩を踏みました。
それはAmazon Prime Shipping Program、アマゾンの会員配送プログラムです。
ユーザーは一定の年間料金を払うだけで、プログラムに該当する商品全てが2日以内に届く配送サービスを利用できます。
当時、アマゾンは10箇所の倉庫しか持っていませんでした。
その規模でこの計画を実施するのは不可能でした。
そして、アメリカ全土でこの野望を実現するために、アマゾンがたくさんのAmazon Fulfillment Center(アマゾン「実現」センター)という大型流通センターを各地に建て始めました。
2022年1月時点で、アマゾンはアメリカで110箇所、海外で185箇所の大型流通センターを保有しています。

(あるアマゾン流通センターの一角。引用:https://en.wikipedia.org/wiki/File:Amazon_Espa%C3%B1a_por_dentro_(San_Fernando_de_Henares).JPG

大型流通センターには手作業が必要なので、アマゾンが各地で大量の新たな雇用を作り出しました。
これで、アマゾンは今、従業員数ランキングのアメリカで二位(一位はウォルマートです)の会社になっています。
雇用安定への貢献で、アマゾンと政府の関係が一層よくなりました。
税金減免や補助金などの政策でアマゾンを誘致する州政府が少なくありません。

AWS

先に述べたように、アマゾンはデータを非常に重視しています。
アマゾンの膨大なデータ計算の運行を支えるためにすでに強力なデジタルインフラを作りました。
むしろその分野でリーダーとしての力も持っていました。
データのインフラを制するとデジタル世界を制するという理念を持って、2002年、AWS(Amazon Web Services)という総合的なクラウドコンピューティングサービスを始めました。

AWSでは、サイト構築から機械学習まで、100種類以上のサービスが利用できます。
2013年、CIA(アメリカ中央情報局)との契約はAWSにとって大成功の証拠と見られています。
現時点で数百万の企業がAWSを利用しています。
アマゾンはついに、無数のサーバやケーブルによって作られた「クラウド世界」を制することができました。

デジタル帝国

ネット販売やクラウドコンピューティングだけではなく、さまざまなジャンルに存在感を表示しています。

KindleやAlexaなどの人気電子製品、GoogleやFacebookと競争するAmazon Adsという広告サービス、Berkshire HathawayJP Morgenと連携して提供する生命保険、137億ドルでWhole Foodsを買収して食料品業界への進出、日本でもよく知られているAmazon Prime Videoなどのサービスと製品で、アマゾンはさまざまな業界で活躍しています。

創業以来25年を経て、アマゾンはすでに前代未聞の大規模の企業になっています。
ある経済評論家は、ベゾスが経済活動そのものをアマゾンのモノにしたいように見られていると言いました。

地球上で拡張している一方、アマゾンは宇宙への進出も進んでいます。

宇宙へ

2000年、ベゾスが航空宇宙企業Blue Origin(ブルーオリジン)を設立し、イーロン・マスクのSpaceXと共に、民間資本で宇宙事業に参加する時代を開きました。
ブルーオリジンは軌道宇宙飛行、垂直離着陸ロケットなどに関連する技術を開発しています。

(ブルーオリジンの月面着陸船-BLUE MOON。引用:https://www.youtube.com/watch?v=GQ98hGUe6FM

ECモールとしての特徴

もちろん、ECモールはアマゾンの原点であり、業務の中心でもあります。
アマゾンは中国市場以外(いろいろな原因で、アマゾンが2019年に中国市場から撤退しました。)世界で利用者数の一番多いモールです。2億人がアマゾンの有料会員プランを利用しています。
つまり大量な「常連客」で、プラットフォームでの購入力が保障されています。

アマゾンは、販売者にも出品規模や状況に合わせたさまざまなプランを提供しています。

アマゾンへの出品にかかる費用は、料金プラン、商品カテゴリー、配送方法によって変わります。
ビジネスや目標に合わせて、最適なオプションを自由に組み合わせることが可能です。

日本からの利用について

アマゾンは日本で現地法人アマゾンジャパン合同会社を通じて全般的なサービスを提供しています。
中小企業を始め多くの日本企業が進出・販売を行っています。

まとめ

ガレージのオンライン書店から超大手デジタル帝国に成長したアマゾンの物語はまさにインターネット時代の歴史の縮図とも言えます。
たくさんの人がベゾスにアマゾンの成功の秘密が何かと聞きましたが、彼はいつも「お客様への執着」と答えました。
会議室でミーティングするとき、常に一つの空いた椅子を置く慣例があるそうです。それはお客様を代表する席だからです。

インターネット時代の「諸行無常」中で起業して倒産した参加者がたくさんいましたが、アマゾンが自分の理念を徹底的に貫くことで成功したのは、消費者の心という「常」を掴んだからかもしれません。

そして最後に、誰でもアマゾンから学べる一番のレッスンは下の画像になると思います。

(創業初期のベゾス。引用:https://www.youtube.com/watch?v=GQ98hGUe6FM

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