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【クーボンの海外リユース探訪記 Vol.26】アジア編ー バングラデシュ

コラム海外リユース探訪記2024-03-26

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今回もっとも印象的だったのは、「ダッカ近郊ビル崩落事故」(ラナプラザの悲劇)の現場に建てられた慰霊碑でした。労働者のシンボルである「鎌と槌」をあしらったこの慰霊碑は、およそ4,000人以上の死傷者を出した大事故を後世に伝えています。

ラナプラザの悲劇乗り越え 環境改善で高品質なモノ作りへ

ラナプラザ跡地に建てられた慰霊碑

2013年4月24日。8階建ての商業ビル「ラナプラザ」が崩れ落ち、建物内にいた利用客、縫製工場の従業員ら合わせて1,100人以上が死亡。負傷者約2,500人、行方不明者約500人という大惨事となりました。事故の原因は、ビル所有者によるずさんな安全管理体制や違法建築の繰り返し、危険が指摘されたにも関わらず従業員に強制労働を強いたことなどです。
しかし、その素因は海外の大手ファストファッションブランドによる搾取体制でした。彼らが長きにわたって低賃金と過酷なノルマを発展途上国の工場に強い、現地のずさんな職場環境を黙認し続けた結果なのです。
2025年には1,634.69億ドル(約24.01兆円)を超える成長が予想されるファストファッションビジネスの舞台裏には、このような犠牲があることを知っておくべきでしょう。

この大惨事は、世界各国に対して「誰も犠牲にならない継続可能な成長と発展」の重要性を伝え、2015年9月の国連サミットで「SDGs」が全会一致で採択されました。

職人たちの幸福叶える ある日本企業の挑戦

大阪のアパレル企業「わんピース」からOEM製品の委託を受注している工場を訪問しました。わんピースは2010年代とかなり早い時期から、革製品の下請け先の開拓に着手していました。あまり先例がない挑戦で、国民性によるすれ違いやトラブル、将来性の不透明さに長い間苦戦したものの、今では質と安さの両立を実現し、大小さまざまなロットを依頼できるほどの関係性を構築できています。

代表取締役である山口悠介さんが心がけているのは、現地で働く「職人」たちの幸福。現地工場に対しては、専属契約を結ぶ代わりに大量の発注を約束することで、労働環境の悪化を防止。給与は直接職人に手渡しし、中抜きを防ぐなど工夫を行っています。その結果、工場の職人たちは充実した環境と報酬で実力を発揮し続けることが可能に。わんピース側も特別特恵措置を活用し、高品質な製品を低コストで日本へ輸入し、無理をすることなく利益獲得を実現できています。
こうした運営者と労働者双方が利益を得て、消費者も安心して利用できる「三方よし」的なシステムはまさにSDGs的だといえるでしょう。

革製品の工場と縫製工場では、レザー加工や刺繍、ボタンつけや染色まですべてを請け負っています。「おっ」と思ったのは、現場の人々が、製造されている製品について率先して詳細な説明を行ってくれること。自分たちが手がけているモノに対する自信と誇りがうかがえました。

機械刺繍を行うラインには、AIが作業をしてくれる機械がズラリ。その一方で、手刺繍のスキルに優れた職人も多数雇用されています。地方にいる優れた技術を持つ人材の活躍を生み出し、ユニークな質感の良さが自慢の手刺繍製品を、世界に送り出す場にもなっています。品質向上のための検品や若い社員への技術指導等もくまなく行われており、品質面でも信頼できるでしょう。

バングラデシュは、大きな悲劇を乗り越え、着実に発展を続けています。日本との国際的なつながりが強いということも、ビジネス進出にあたっては利点といえるでしょう。「ビジネスを通してバングラデシュを豊かにしていきたい」というストーリーに共感を覚える方であれば、とてもやりがいを感じられる舞台です。

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