中国のEコマースの紹介 ― 商品特化型の拼多多(ピンドゥオドゥオ)、網易厳選(Yanxuan)、蘇寧易購(Suning.com)と得物(Dewu)
海外EC調査部2022-06-23
目次
前回のおさらい
前回(中国の2大Eコマース ― 総合型ECの淘宝(タオバオ)と京東(ジンドン))で説明した通り、中国Eコマースの二大巨頭であるタオバオとジンドンは多種多様な商品とサービスを提供しており、超総合型プラットフォームになっています。
また同時に、タオバオとジンドン以外のEコマースプラットフォームは、独自のビジネスモデルやターゲットを絞るなどの方法を模索し、日々市場シェア拡大を目指しています。
この記事では、特殊な戦略の中国Eコマースの中から四つを紹介したいと思います。
「とにかく安く」の拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)、特徴と問題点
拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)は、2015年上海からスタートした「とにかく安く販売・購入」戦略に特化したECです。
共同購入により、友人、家族、SNSなど複数人で同商品をメーカーにまとまった数で発注し、一人当たりの価格を安く押さえ取引を成立させています。またセラーにとっては、一度にまとまった注文が入るため、在庫を抱えにくくなるというメリットがあります。
主な対象商品は生活用品や日用品ですが、appleなどの量産デジタル製品もあります。一方で、ブランド品や工芸品はほとんどが共同購入の対象外となっています。
ユーザー層は主に三・四級都市在住者(中国内陸部の田舎や農村部に住む人々)や中所得者です。農村部で農業を営む人にとっても、都市部から一括で注文が入ることができ、売上アップをはかることができるような仕組みとなっています。出店は企業・個人ともに可能で、海外商品専門店などもあります。
この拼多多ですが、日本ではここ数年の間に、同じ親会社の運営するTemu(テムー)が何かと話題になっています。Temuは拼多多と同じく、PDDホールディングス(拼多多/ピンドゥオドゥオ)が運営する中国国外向けアプリで、アパレル商品や化粧品、家電、家具、日用雑貨などを取り扱っています。
このTemuについては、現在様々なマイナス面が指摘されています。もともと拼多多でも指摘されていた、偽造品、違法商品、商品情報や説明と一致しない製品の発送、商品の不着、違反広告の配信などの問題点が、Temuでも言及されているのです。
日本ではTemuの広告を目にすることも増えましたが、こう言った背景から、利用には慎重に検討をすることを推奨します。
参考:
米グーグル、中国ネット通販アプリを停止 セキュリティー懸念で
https://jp.reuters.com/article/google-cyber-pinduoduo-idJPKBN2VO01Y/
アメリカで最もダウンロードされた新アプリ「Temu」の真実https://web.archive.org/web/20230309172103/https://time.com/6243738/temu-app-complaints/
中国発の低価格EC「Temu」、日本で事業開始
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC113R40R10C23A7000000/
「ODMモデル」の網易厳選(Yanxuan)
網易厳選は網易(ネットイース)傘下の高品質の日用品(家具と小型家電も含む)を取り扱うECです。網易厳選の特徴は、グッチやバーバリー、UGGなどの国際的ブランドを支える製造業者らが生産した自社ブランドの格安製品「ODM(Original Design Manufacturing)モデル」を販売していることです。
ODMとは:台湾や中国などの企業に多く見られる、製品の設計から製造までを一貫して行う企業や業態のこと
網易厳選のODMモデルは有名ブランド製品の製造過程と同じ環境で生産されますが、ブランドネームを使っていない分、コストを抑えることができます。ブランド製品よりも販売価格が低めに設定されるため、購入者はブランド製品と同等の品質の商品を、価格を抑えて購入できるというわけです。
ただしこのビジネスモデルには反発も起こっています。上記のようなブランド元は、同じ製造過程で類似商品を製造することを許可しているわけではなく、網易厳選と正式な契約を結んでいるわけでもありません。そのため、ブランド側から良い印象がないことは容易に想像できます。
このようなビジネスモデルのため中所得者層に人気で、2021年には網易厳選は「好きなように生きる」という新しいブランド生活理念を打ち出し、若い世代に寄り添い、多様なライフスタイルを掲げました。同時に、製品はシンプルで控えめなデザインのブランドコンセプトを堅持し、消費者に高品質のグッズを提供することで、誰もが好むライフスタイルを実現することを目指しています。
家電製品が主力の蘇寧易購(Suning.com/スニン・コム)
蘇寧易購は大型・小型の生活家電製品やパソコン、スマホなどのデジタル製品を中心に生活用品まで広く取り扱う中国のECです。1990年に家電販売店としてサービスを開始後、多角的に事業を展開し現在の蘇寧易購の会員は6億200万人に達しています。日本で言うビックカメラやヨドバシカメラ等、家電量販店の様な存在です。2009年、当時日本の家電量販店だったラオックスを買収したことでも知られています。
中国の主要都市に多数の実店舗を構え、前述の網易厳選(Yanxuan)と同じく淘宝(タオバオ)にも蘇寧易購の旗艦店があります。
参考:https://www.suning.cn/cms/aboutCompany/1795.htm
鑑定システムで信頼を得たスニーカーメインの中国EC 得物(Dewu)
最後に紹介するのは「得物(Dewu)」です。日本国内ではPOIZON(ポイズン)というアプリサービス名で、既にスニーカー愛好家の間では定着しているECです。
中国において、「ブランドスニーカーを購入するならDewu」と考える人は少なくありません。得物でもスニーカー以外のファッションアイテム全般を取り扱っていますが、スニーカーに特化している部分が他のファッション系通販サイトと大きく異なる点です。またDewuでは、希少性の高いガジェット、トレカ、フィギュアなども取引されています。
得物の特徴は、とにかく本物品質、真贋鑑定へのこだわりです。「まず鑑定、その後出荷」という徹底した工程を踏み販売を行います。タオバオと同じくアリババグループ傘下の独立中古品取引ブランド「Idle fish(アイドルフィッシュ)」も鑑定センターを設置していますが、得物の鑑定チームは特にスニーカー分野で中国国内の消費者の信頼を獲得しています。
個人・企業共に出品、中古品と新古品両方の取り扱いが可能です。
得物(Dewu)の鑑定システム
得物の鑑定システムは、購入側も自らの商品を鑑定依頼する事が可能です。個人・企業からの出品ともに、得物の鑑定システムを通さなければ出荷できない仕組みとなっています。
購入する際、セラーは商品を注文ユーザーへ直接発送するのではなく、得物の鑑定センターが商品を本物と認定次第、得物から郵送を行います。そのため発送期間は一週間程かかりますが、購入側にとっては真贋鑑定を経た本物保証付きというメリットがあります。
自分の商品を鑑定依頼
得物ユーザーは、実際に販売するかどうかに関係なく、得物アプリで自分の商品を鑑定依頼することができます。鑑定対象の商品種類を選び、商品の写真を撮影しアプリにアップロードすると、得物の鑑定システムがオンライン鑑定を実施します。
鑑定は有料で、鑑定士により料金が異なります(多くは200円程度)。
一日程で鑑定結果を知ることが出来ます。
さいごに
以上4つが、独自路線を武器に拡大を続ける中国Eコマースです。
次回は、ECメインではなく、SNSなどのEC以外の他サービス提供からスタートし発展を遂げたEコマースを紹介していきたいと思います。