サーキュラーエコノミーって?③より深く理解するために
Reuse for the Future2021-06-07
これまではサーキュラーエコノミーの概要や、その全体構造を表すバタフライダイアグラムについて解説してきた。
サーキュラーエコノミーって?①リニアとサーキュラー
サーキュラーエコノミーって?②バタフライダイアグラム
今回はさらに理解を深めるために、サーキュラーエコノミーの実現において重要になる要素を関連用語とともに説明していきたい。
C2C(Cradle to Cradle/ゆりかごからゆりかごへ)
まず、バタフライダイアグラムの元となった考えであるC2Cに触れておきたい。
C2Cとは ”Cradle to Cradle” のことで、日本語にすると「ゆりかごからゆりかごへ」という意味だ。
(ビジネス用語のC2C Consumer to Consumer とはまた別物である。)
サーキュラーエコノミー①の記事で紹介した「リニアエコノミー」は、生産から消費~廃棄までの流れが「ゆりかごから墓場(Cradle to Grave)」とも表現できる。
それを積み重ねた結果、現在の汚染や環境破壊、ゴミ問題が発生しているのだ。
この「ゆりかごからゆりかごへ」の考え方は、地球や自然というゆりかごから取ったものはゆりかご(自然界)へ戻し、再び循環させましょうというもの。
What is Cradle to cradle?
1990年代に、科学者であるマイケル・ブラウンガード氏と建築家でデザイナーのウィリアム・マクダナー氏らによって提唱された。
彼らは2002年に著書を出版し、2009年には日本語訳版も発売されている。
原書:Cradle to Cradle: Remaking the Way We Make Things
William McDonough (著), Michael Braungart (著)
日本語訳:サステイナブルなものづくり―ゆりかごからゆりかごへ
ウィリアム マクダナー (著)、マイケル ブラウンガート (著)、吉村 英子 (監修)、William McDonough (原著)、Michael Braungart (原著)、山本 聡 (翻訳)、山崎 正人 (翻訳)、岡山 慶子
そして、マイケル・ブラウンガード氏が創設したEPEA。
そのスイス支部のサイトは日本語にも対応しており「ゆりかごからゆりかごへ」の基本理念や、EPEAの歴史について詳しく見ることができる。
これらの理念をもとにして作られた、安全で持続可能な製品基準がC2C認証である。詳しくは、EcoNetworksのインタビュー記事において、マイケル・ブラウンガード氏が分かりやすく説明している。
デカップリングとは
(ブリジストン公式サイトより画像引用: Environment(環境) 持続可能な社会の実現を目指して)
今までのリニアエコノミーにおいては、資源を取れば取るほど色々なモノや技術を製造・発展していくような仕組みと構造になっていた。
つまり、資源消費量と環境への影響が、経済の発展と比例している状態だったのだ。
これを切り離していこうというのが「デカップリング(decoupling)」である。
限りある資源を消費せず、そして環境に影響を与えずとも、経済発展と人類の豊かな暮らしの実現は可能なはずだ。
持続可能な社会を目指して、「デカップリング」は重要な課題であり、環境と成長の両立を果たすために私たちは挑戦していかなくてはならない。
アクセンチュアの5つのビジネスモデル
世界的総合コンサルティング会社 アクセンチュアは、サーキュラーエコノミーへのビジネスモデルの変革を、「『無駄』という概念を捨て、全てのモノに価値があると認識すること」と表している。
同社の調査では、「無駄」を「富」に変え持続可能な経済を実現することで、巨額の利益が生み出されることも明らかとなっている。
(参照:無駄を富に変える:サーキュラー・エコノミーで競争優位性を確立する|アクセンチュア)
彼らがサーキュラーエコノミーの概念を実用的なビジネスモデルに落とし込んだものが、以下の5つである。
再生型サプライ
繰り返し再生し続ける100%再生/リサイクルが可能な、あるいは生物分解が可能な原材料を用いる。
回収とリサイクル
これまで廃棄物と見なされてきたあらゆるものを、他の用途に活用することを前提とした生産/消費システムを構築する。
製品寿命の延長
製品を回収し保守と改良することで、寿命を延長し新たな価値を付与する。
シェアリング・プラットフォーム
Airbnb(エアビーアンドビー)やLyft(リフト)のようなビジネス・モデル。使用していない製品の貸し借り、共有、交換によって、より効率的な製品/サービスの利用を可能にする。
サービスとしての製品(Product as a Service)
製品/サービスを利用した分だけ支払うモデル。 どれだけの量を販売するかよりも、顧客への製品/サービスの提供がもたらす成果を重視する。
(引用:無駄を富に変える:サーキュラー・エコノミーで競争優位性を確立する|アクセンチュア)
シェアリングエコノミー
サーキュラーエコノミーを築いていく過程において、これからますます普及していくであろうものが、アクセンチュアのビジネスモデルの一つでもある「シェアリング・プラットフォーム」だ。
「シェアリング・プラットフォーム」とは、何かモノやスキルなどを共有する機能を持つ場所のことを指す。
それらの形態を活かして成り立つ経済が「シェアリングエコノミー(共有経済)」である。
経済産業省はこれを「場所・乗り物・モノ・人・お金などの遊休資産をインターネット上のプラットフォームを介して個人間で貸借や売買、交換することでシェアしていく新しい経済の動き」と定義している。
(引用:経産相 シェアリングエコノミービジネスについて)
ここではわかりやすくモノ(製品)を例に取り上げてみよう。
最近、街中や日常生活でよく目にするシェアリングサービスといえば、自転車や車のシェアリングサービス、宅配ボックス、コーディネート込の衣類や高級ブランド品などの特色があるアパレル系レンタルなどがある。
ここで鍵となるのが、このシェアが行われる製品の所有者は企業であるということだ。
自転車を例に取ろう。
自転車のシェアリングサービスは、かなり以前から観光地や駅前にレンタルサイクルなどとして存在していた。
しかし現在では、街中に設置された無人ステーションでのレンタルが可能になっており、決済もキャッシュレスだ。従来のレンタルサイクルとは違い、元の自転車を借りたステーションとは別のステーションに返却できるものも多い。
リニアエコノミーにおいては、個々人がモノを所有(独り占め)する事に疑問を持たない社会だった。
その場合、企業としてはどんどん製品を買ってもらわなければ利益が出ない。
消費者に買い替える機会を与えるべく、新しい機能をつけた新商品を出したり、デザイン性を磨いたり、果てには一定期間で故障や劣化が起きるように設計する計画的陳腐化が生まれる。これでは長く使えるものであろう自転車も、消耗品のようになってしまい、結果、消費者は短いスパンでゴミを排出することになっていたのだ。消費者にとって自転車を捨てるのはなかなかの手間と負担である。不法投棄が発生する原因ともいえるだろう。
しかし、シェアリングサービスで企業が製品を所有・提供した場合、随分とその考え方は変わる。
企業としては持ち主は自分なので、長く大切に使ってもらい、交換や修理のコストは抑えたい。それゆえ、壊れにくくて丈夫な、品質の良いものを製造・提供するようになる。メーカーが管理しているのであれば、故障品の修理や交換が必要な時も確実に回収することができ、そこからまだ使える部品や素材を有効利用することができる。廃棄物は減り、必要な人が必要な時にだけ利用するので製品を持て余す時間も少ない。
一人一つ製品を所有するよりも、製造しなければならない製品の数も減り、全ての無駄が抑えられる仕組みではないだろうか。
最近では、家電や家具のレンタルや、家事や育児、知識などスキルのシェアも普及している。
今まであまり利用したことがない人も、この機会に日常の選択肢として取り入れてみてはいかがだろうか。
最後に
これまで3編にわたってサーキュラーエコノミーを扱ってきた。
この概念は、大きな視点ですべての立場の人がその構造を理解し、小さな視点で自分の生活の中に取り込むことで成り立っていくものではないかと考える。
企業やお店側だけが努力すればいいというものではなく、消費者や利用者だけが意識すればいいというものでもない。
それぞれの視点でより良い選択とは何かを考え、行動に反映していくことが明るい未来と豊かな生活につながっているように感じる。
日本でも着実に環境意識が広まりつつあるが、まだまだ学ぶべきことは多い。
ここで皆さんと知り得たことを共有して、ともに考え、身近なことに紐付けて、「より良い選択」をしていくきっかけづくりができれば幸いである。