Reuse for the Future

廃棄した古着は最後どうなる?ー「おしゃれな」ファストファッション産業の裏にある汚染問題 前編

Reuse for the Future2021-12-27

ファストファッション産業の概要

(売上高業界世界第2位のH&Mの大きな広告看板。引用:https://www.newsweek.com/2016/09/09/old-clothes-fashion-waste-crisis-494824.html

トレンドの「速さ」

ファストファッションの急成長に伴って、廃棄した古着の量も急激に増大し、我々の地球環境に対する悪影響が以前より深刻化しています。
ファストファッションとは、最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態のことです。
Fast Fashion(ファストファッション)をfast(速い)と呼ぶのは、いくつかの「速い」要素があるからです。

まず、ファストファッションというビジネスモデルは、根本的にファッションの「速い」変化による消費者の無限の購入需要に依存しています。
今の時代は以前よりもっと速く、季節ごとに、月ごとに、一日ごとにまで、購入できる新しいデザインの衣料品が出ています。
しかも、SNSやメディアの影響で、この速い変化を特徴とする消費文化と観念が人々の日常生活に浸透しています。

ファストファッション企業は単に消費者の需要に応じるだけではなく、消費者の新しい需要も作り出しています。
社会文化にも影響を加え、さまざまな方法で、消費需要を喚起しつつあります。
経済成長やビジネスモデルなどの面から考えると、確かに素晴らしい仕組みです。
しかし他の面、例えば環境とか人権から見ると、実は様々な深刻な問題があります。

生産過程の「速さ」

次の「速い」要素は、生産過程の速さです。
最大限の利益を出すために、ファストファッション産業の生産者が「速い」生産過程を作り、上で述べた「速い」トレンドに適応しなければなりません。
そのため、大量な廉価労働者を雇い環境に悪い製造工場―特にアジアの発展国で設立しました。

販売の「速さ」

そして、「速い」販売になります。IT技術やEコマースの発達によって、我々の買い物が非常に便利になり、選択肢も多様化しています。
このITインフラもファストファッション急成長の一要因と見られています。
特に、コロナの影響で、在宅時間が急増し、ネット通販を利用する消費者が大幅に増えています。
大量の安価なファストファッションブラント商品と提供しているネット通販の便利さや多様な選択などの要素が、個人の購入意欲を刺激する傾向があると思います。

(欧米では、不用の衣料品を寄付する人が多いです。引用:https://www.newsweek.com/2016/09/09/old-clothes-fashion-waste-crisis-494824.html

使用の速さ

最後の「速い」要素は、使用の速さです。ファストファッションの衣料品は、安価のため、質が下がり、長持ちしません。
イギリスのある調査の結果によれば、イギリス人の同じ衣服の平均着用数が14回。
Guardianの記事には、三分の一の若い女性が同じ衣服を捨てる前に、2、3回しか着ていないと言っています。

しかし、我々の地球環境にとってこの「速さ」は、決して良い速さではありません。

関連する環境問題の現状

消費者にとって、衣料品を買うために払う代価はお金ですが、もう一つの隠れている代価があります。
それは地球が払う環境的な代価です。

(ゴミの中で廃棄した古着を探し出す人たち。引用:https://www.newsweek.com/2016/09/09/old-clothes-fashion-waste-crisis-494824.html

UNEP(国連環境計画)の調査によると、ジーンズ一本を生産するために、3,781リットルの水が使われます
そして、最初の綿を育てることからこのジーンズが最終製品として消費者の手に届くまでの過程では、33.4キログラムの二酸化炭素が排出されます。

UNEPとEllen MacArthur Foundationのリポートを見ると、驚くべき事実が出てきます。

  • 毎年、ファストファッションが消費した水の総量が約930億立方メートル。この量は約500万人分の年間水消費量です。
  • 世界範囲では、20%の廃水が衣料品の染色や加工過程によって排出されています。
  • 衣料品生産に使われた繊維の87%が最後焼却処分され、あるいは埋め立てごみになっています。
  • ファストファッションの二酸化炭素排出量は全世界の二酸化炭素排出総量の10%を占めています。全ての航空輸送と船便輸送によって排出した量を超えました。今の増加速度から予測すると、2030年にファストファッションの二酸化炭素排出量が全体の50%に到達する可能性が高いです。
  • 毎年50万トンの衣料品ゴミから出た超極細の合成繊維が海に廃棄されています。この量はペットボトル500億個の量に相当します。食物連鎖に通じて人間の体に入る危険性があります。しかも、海水から超極細の合成繊維を抽出するには今の技術では不可能です。

このような事実が「おしゃれな」ファストファッション産業の裏にある汚染問題の深刻さを物語っています。

後半へつづく

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