海外EC調査部

韓国のEC 11番街―Amazonとのサービス提携がもたらすもの

海外EC調査部2022-02-21

概要―11番街のサービス差別化

11番街は、韓国の代表的なEC企業です。

SKテレコム(韓国最大の携帯電話事業者)のオープンマーケット子会社であります。
ここ3年間の11番街の年間取引額は、クーパンに次いで2位に位置しています。

2020年11月17日、SKテレコムは子会社の11番街を通じてAmazonと交渉し、11番街の一部の持分に対してAmazonが投資する形で(約30%)11番街とAmazon間で戦略的な提携関係を結びました。
SKテレコムは11番街を通じてAmazonの商品を買うことができ、Amazonも今後11番街を通じてAmazonサービスを拡大する方針だと言ってます。

11番街 サービス・特徴

Amazonとの協業の1か月の成績は肯定的です。
モバイルインデックス(モバイルアプリの売上順位を確認できるアプリ)によると、昨年9月の月間アクティブユーザー数は991万1,298人で、前年同期比約15%増となっています。
前月と比べても5%増加しています。

新規アプリのインストール件数も、1月を最後に超えられなかった30万件を達成したそうです。 11番街のAmazonサービスを経験するためのお客様が多く集まったと考えられます。

特に、親会社のSKテレコムの宇宙パス10円イベントが功を奏したそうです。
宇宙パスは11番街のAmazonを利用する顧客に無料配送される購読サービスで、月最低400円です。
サービス開始から1週間で15万人が加入するという成果をあげました。

Amazonとの協業は売上にもプラスの効果もありました。
海外直購取引額はAmazonグローバルストアの開始後一週間で、前月同期比3.5倍へ増加しました。
11番街の接続頻度が地道であれば、既存の売上アップ効果も十分期待できそうです。 

11番街は「多くの顧客がアマゾングローバルストアと宇宙パスの特典をご体験いただけるように機会を継続して設ける」と説明し、より多くの新規流入利用者を呼び込むために多様なイベントを主催する予定です。

※宇宙パスとは:11番街で提供する無料配送券+特定アイテム割引券のこと。

(引用:https://www.fnnews.com/news/202201040618257627)

※参考:韓国のECマーケットシェアランキング(22年1月基準)

(引用:http://www.koreanclick.com/top10/pc_service_ranking.html?cate=C

11番街の今

現在Amazon内にあるすべての商品が購入できると宣伝してありますが、実際にはすべての商品が購入できるわけではありません。
法的に販売しても大体問題のない(衣類、雑貨などの)商品なのに一部のオプションがついてる商品のみに対して購入ができなかったり、特定ブランドの商品が購入できないなど、11番街の任意でかかっていると思われる制限があるようです。
例えば「11番街 x Amazon」で”アディダス”を検索すると、衣類は多く検索表示されます。
しかし、靴の類はまったく検索に出てこないこともあります。
アメリカのAmazonでは「アディダス」と検索すると当然、スニーカーだけではなくスリッパ、サンダルなど様々な商品が売れていますが、「11番街 x Amazon」では購入できない商品が多いのです。 

各アイテムごとに限られている部分が多そうなので、これを導入できるグローバル協業システムが必要だと思われますし、流通網も観察してみる必要があると思います。

11番街の展望

弱点とされるAmazonの直購入商品の出荷スピードも、将来的には速まると予想できます。
現在11番街でAmazon直購入を買うと最低3日以上かかるそうです。
遅い配送のため、一部では当初期待していたほどでないという声もたびたび出ています。

しかし、今年からは改善に向かうだろうという見方もあります。
11番街は「配送問題を解決するために、坡州(韓国の地域名)物流センターを積極的に活用し、Amazonの商品配送時間の短縮に努力する」とアピールをしています。
財務的な負担は重くなる可能性もありますが、シェア向上のためAmazon Japanを通じた航空物流を開始する可能性もあるという話も出ています。

ご存知のようにAmazonは早いうちに日本市場に進出し、現地にフルフィルメントセンターを構築して市場を掌握しました。
日本と韓国との距離は近いため、Amazon Japanを活用した航空物流を活用すれば、直接配送時間を2日以内に短縮することができます。

ある証券業界関係者の話を引用すると、「航空物流にかかる費用を11番街が負担しなければならないため、業績は短期的には悪化する可能性がありますが、(営業費用、プロモーション費用など)11番街は証券市場上場を優先的に目指している状況なので、高い企業価値を認められるためにこのような出血を十分に甘受できる状況」と言ってます。
(引用:https://www.ekn.kr/web/view.php?key=20220210010001567

まとめ ー国内へ出店可能性は?

11番街以外にも最速の配送(当日注文・当日配送)のサービス戦略と市場シェアを優位にしているNaverやCoupangのような企業が、競争首位を争っています。
11番街の選択は、当面の市場シェアよりも事業規模を強固にするため、または企業価値をしっかりと受け取るために今年の上場を目標にしました。
ECモールを構築するためには一時かなりの赤字を出したとしても、インフラを構築した後は黒字経営に転換する事例もあります。
コロナ時代にグローバルインフラを構築していくという戦略を核心に、当面の市場シェアより事業の規模を拡大するという点で次第に差別的な戦略に分かれていくと思われます。

もちろんAmazonとのコラボレーションは継続しており、韓国での流通市場を徐々に拡大していますが、インフラ構築はについては未だ道半ばと言ったところです。
物流の量と配送、倉庫数、航空運搬と税関の手続き、保管、人材、政府の規制など問題があります。

よって、アマゾンが韓国市場に直接進出しなかったのも、このようなインフラ構築にかなりの投資費用を要すると考えるため、様々なカテゴリーを保有する11番街に間接的な投資方法として掲げ、当分の間ECモールの動態を把握しようということだと思われます。

特に、国内のAmazon Japanの物流を活用したシステムを活用すれば協業の効果はますます大きいと考えられます。 国内にはありませんが、世界的に人気を集めるコンテンツをコラボレーションすることで流通網が構築されれば、出店に肯定的な効果が期待できます。

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