Reuse for the Future

2030年までの使命―経済活動の在り方とグローバル・コモンズの保護

Reuse for the Future2022-07-14

2030年という人類に課された期限

2020年12月に行われたTokyo Forum 2020 Onlineにて、前国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長のクリスティアナ・フィゲレス氏は、

「今後2030年まで10年間こそが、人類の未来に懸念される事について影響を与えることができる唯一の期間であり、2030年以降は何をしてもリスク回避は難しい」

と明言をしました。

この「人類の未来に懸念される事」とは、主に地球の自然環境の悪化による影響、頻発する極端な気象現象、生物の多様性の消失などが挙げられます。
そして2030年と言えば、国連サミットで採択されたSDGs、企業による活動ESG (Environmental Social Governance: 環境・社会・ガバナンス)の目標達成達成期間でもあります。

経済活動の在り方

講演の中では、変革が迫られる人間の活動として、経済活動の在り方とグローバル・コモンズの保護について語られています。
経済活動の在り方には、先程も登場した企業による活動ESGが深く関係してきます。
金融業界では、既に世界の100社以上の銀行が石油やガスなど限りある資源を資産をポートフォリオ(投資家が保有している金融商品や運用商品の詳細な組み合わせのこと)から除外しています。
人類が化石燃料を燃焼させ炭素の排出をし続けることは、地球へダメージを与え続ける事だと気づいたからです。
投資家たちもまた、企業の財務情報だけではなく、企業が環境に配慮した事業活動を行っているかどうかを投資の判断基準にしつつあります(ESG投資)。
また、中国の中央銀行を含む18の各国中央銀行は、地球規模の極端な気候変動とその影響を予測し、国民経済に対する気候のストレステストを行っています。ストレステストとは、金融市場で不測の事態が生じた場合に起こる損失の規模や、回避策を予めシミュレーションしておくことを指します。この場合の不測の事態とは、極端な気候変動や異常気象による経済活動への影響です。
こういった活動を国の中央機関である銀行(日本なら日本銀行がそれに該当)が行っているとなれば、金融業界がどれだけ危機感を抱いているかが分かります。

こういった活動は金融業界だけではありません。
「ネット・ゼロ」と呼ばれる、大気中に排出される温室効果ガスと、除去される温室効果ガスが同量でバランスが取れている状況を目指す企業や業界の動きもあります。
2020年時点で1,200社、総額14兆ドル規模にのぼる企業が、クリーンなエネルギーを利用して製品やサービスを生み出す企業活動を行っています。
この企業の中には、Amazon、アップル、ナイキ、スターバックス、イケアやマイクロソフト、Googleなども参加しています。

長年企業視点では負担だと思われていた脱炭素化の事業活動は、現在は「脱炭素化こそがイノベーションの礎」だという認識に変わりつつあるのです。

グローバル・コモンズの保護

地球規模の共通財産である大気・大地・森林・海洋・生態系など、即ちグローバル・コモンズを守ることは、事業活動の枷ではなく、新しいイノベーションへの一歩となりました。
間近の利益追求ではなく、長期的に地球環境を守る事業活動を行なうこと、それが巡り巡って人間が安定的に経済活動を続け反映していくことにも繋がるからです。
こういった活動は個人単位では難しく、企業、引いては国家規模から地球規模での活動が必須となります。
例えば中国では、2030年までに排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルにすると発表しました。日本や韓国もそれに続き、南アフリカやコロンビアなどの発展途上国でも理解を示す動きが出てきています。

終わりに

ここまで述べた流れの中で、パリ協定以前に4度~6度と予測されていた地球温暖化の気温上昇は、2.1度まで鈍化しました。しかし、これもまだ足りないのです。「1.5度以上になるような道筋をつけなければならない」と講演の中では述べられています。
残された時間はほとんどありません。
2030年までの時間は、人類に迫られている大きな変革期間と言えます。


参考サイト

ESGとは
https://www.nomura-am.co.jp/special/esg/detailesg/

クリスティアナ・フィゲレス前国連気候変動枠組条約事務局長 会見
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35326/report

地球環境危機を救う猶予は10年 12月3、4日 東京フォーラム2020オンラインで専門家が警鐘、「社会経済構造の変革」訴える
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z0508_00199.html

ポートフォリオとは―SMBC日興証券
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ho/J0122.html

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