越境ECで食品を販売したい!避けて通れないFDAについて考える―1
海外EC調査部2023-03-27
越境ECにおいて食品を扱う上で、避けて通れないのが各国の輸入規制です。特にアメリカのFDA(Food and Drug Administration)、アメリカ食品医薬品局による規制については、越境ECに携わる人であれば一度は調べた経験があるのではないでしょうか。
補足すると、FDAは基本、食品だけでなく人の肌に触れたり体内に摂取されるものー化粧品や香水、薬品などを輸出する時にも必要な認証です。
これをクリアしなければ、越境販売での食品取り扱いは難しいと考えて良いでしょう。
FDAの役割―BtoB販売の場合
本記事でご紹介するのは、主に大手食品メーカーが自社倉庫や自社で製造施設などを運営している場合、かつ自社製品をアメリカ市場に流通させたい時に必要な手続きです。
FDAはアメリカへ食品を送る上で、個人間のプレゼント、お土産などの商用利用でないやり取り以外全て、例外無く適用されます。
しかし、送られた食品が一個人の消費で完結するか、その後アメリカ国内に流通するかにより手続きが分かれます。
手続きは以下の通りです。
1.製造施設の登録
2.米国代理人の指定
3.商品ラベルの英語化
4.食品安全計画の策定
5.事前通知 ※事前通知に関しては、後で詳しく触れていきます。
認証手続きを行うにあたり、登録料や更新手続きに費用はかかりません。
認証は取得後も無期限ではなく、2年に1度手続きが必要です。
また仮に違反した場合には、罰金・懲役などの刑罰が課せられる場合もあり、製品の販売も停止となります。
グレーゾーンにある食品販売
ここまでの説明で、食品一つにつきここまで手間がかかるものか…と驚かれるかもしれません。また、海外で日本語の商品ラベルのまま販売されている食品だって見かけるのに?と気づかれた方もいるかもしれません。実情として、FDA認証を受けずにグレーな状態で越境販売を行っているケースも少なくありません。
先述の申請要件でも、施設と米国の代理人登録は越境ECの事業者にとってかなり手間と労力を要することは間違いありません。登録施設は、必ずしも食品を製造する工場のみでなく、加工、梱包、更には保管する倉庫も場合によっては対象範囲内となります。更にEC事業者の立ち位置―他社で製造した食品を販売しているか、自社製品を販売しているのかによっても登録対象となる施設が変わります。時には工場への立ち入り検査も実施され、現地へ調査員が派遣され厳しく監査が行われることもあるのです。
また米国の代理人に関しては、常にアメリカへ滞在、居住をしていなければなりません。アメリカに関連企業が無い場合にはそのために人材を確保する必要があります。
越境販売における食品の扱いは難しい、ノウハウがなかなか共有されていない・・・そういった現状には、FDAの影響が大きいと推測されます。
とは言え、自国民の口に入るものの安全を確保するのは、アメリカだけでなく国家としては当然の対応です。越境EC業界での更なる食品販売の根付きと長期的な視点から、販売事業者としてのコンプライアンス遵守は必要不可欠と感じます。
次回は、FDAの役割―BtoC販売の場合、個人消費の場合について解説していきます。