【クーボンの海外リユース探訪記 Vol.35】ヨーロッパ編 ー アイルランド
コラム海外リユース探訪記2024-08-19
この連載は、世界を股にかけた循環型社会を作るために、弊社代表の大久保が見てきた海外のリユース情報や旅行記をお届けするコラムです。
最新の連載はリユース経済新聞の紙面で読むことができます。
「あえて」選ばれるリユース品 社会問題解決の糸口に
前号でアイルランドの人々はチャリティ意識が高いと述べました。実際にストリート沿いにあるリユースショップやリサイクルショップを何軒か回ってわかったのは、その多くが女性支援や児童保護、難病患者支援等に関連した〝チャリティ活動の窓口〟も兼ねているということです。イギリス発のNGO団体「Oxfam(オックスファム)」等、もともと人道支援活動を行っている組織が運営しているお店も見かけました。
リユースとチャリティのハイブリッドショップ
その中のひとつ、リムリックを拠点に家庭内暴力被害者を支援する「ADAPT」では、主に地域内から寄付された食器や家具、書物等の中古を取り扱うショップを運営しています。コーポレートカラーの紫色が目立つ外装には「ADAPT SERVICES」と書かれています。外看板には、家庭内暴力によって生活が困難な女性や子供たちに向けて、この店で受けることができる支援が記載されており、その内容が非常に充実しているのです。
たとえば、緊急避難用のシェルターの提供や、24時間対応可能でなおかつ匿名・秘密厳守な無料ホットラインの設置、裁判所への同行や権利擁護の支援、その他心や身体の治療への支援等々、あらゆる方向から手助けを行ってくれます。
こうした助けを必要としている人々は、紫の看板を目じるしにお店に駆け込むことで、サポートを受けられるというわけです。
生活に根付く先進的なリユース思考
ストリートでは、新品を扱うアパレルショップよりも、リユース品を主に取り扱うお店を多く見かけました。品ぞろえも決しておろそかではなく、リムリックのADAPTでは、3階分もの売り場を設けるほど在庫が豊富で、900ユーロ(2023年9月時点で約14万3,000円)もする高価なアンティーク家具等も販売されていました。アジア家具の品ぞろえが寂しい点は少々気になりましたが…。
中には、陳列がかなり雑然とした意識が高くなさそうなお店も見かけましたが、それはごく一部のようです。いずれにせよアイルランドの人々は、「新品を買うよりリユース品を買うことで、環境保護や貧困対策へ貢献したい」等何かしらの目的意識を持っていると感じました。
リサイクルボックスに関しても種類が豊富、なおかつ新聞紙と空き缶を同じ場所に入れることができるような工夫がされている等、環境問題への意識も高そうです。
ギネスビールがおいしく、シャノン川の風景も美しいアイルランド。そこでは「リユース」と「チャリティ」の両立というSDGsの理念にも通じる、新しいかたちの文化が生まれていました。
筆者紹介
株式会社ワサビ
代表取締役 大久保裕史(オオクボ・ヒロシ)
1975年大阪府出身。リユースのキャリアは前職の小さな古着屋からスタートし、EC興隆期前にノウハウを積み重ね、楽天市場中古部門の初代ショップ・オブ・ザ・イヤーを2年連続受賞。2012年に株式会社ワサビを創業。現在は日本だけでなく海外 × リユース × technologyこの3つに特化した一元管理システムの開発から、日本から世界へとワールドワイドなネットワークでマーケットを拡大中。