片付けサービス需要の急増と問題点―出張買取や査定の現状―
Reuse for the Future2022-01-12
目次
片付けサービスとは
近年、片付けサービスの需要が急増しています。
「片付けサービス」とは、引越し時の不用品処分・遺品整理・ゴミ屋敷の掃除など、不用品を処分、或いは何らかの形で専門業者へ託し手放す事全般を指します。
後に記事内でも触れますが、こういったサービスの総称に関しては現状これと言う共通の呼び名が無いため、便宜上k記事内ではこう呼びながら進めて行きたいと思います。
なお、「片付けサービス」には不用品の処理や廃棄だけでなく、業者がリユース品として査定を行ったり、リサイクルへ回す行為も含まれています。
片付けサービス需要の急増の背景
需要が増えた背景には、私たちの暮らしの変化が大きく影響しています。
例えば、遺品整理増加の理由には、高齢化・核家族化、単身世帯の増加が挙げられます。
親世帯は地方で暮らし、首都圏ではその子ども世代が離れて暮らすケースは多く見られますが、仮に親世帯が亡くなった場合、遺品整理などの手続きが発生する可能性は十分に考えられます。
また、日本全体の高齢化も大きな原因です。
不用品の処理には、前段階として「不用品を移動させる」行為が発生します。
車に乗せ該当業者に持ち込む、行政などの指定場所に置くなど、高齢者には体力的に困難なステップです。
そう言った場合に役立つのが、「片付けサービス」です。
業者にっては自宅や希望した場所までの引き取りや、直接運び出して貰うなどのサービスも受けられます。
高齢者にとっては困難で厄介な手続きを一手に引き受けて貰える、便利なサービスというわけです。
もちろん、この需要に伴い、業者の数も急増しています。
業者による片付けサービスの問題点
急増する片付けサービス需要とそれを生業とした業者には、残念ながら現状多くのトラブルも存在します。
下記に挙げた例は、国民生活センターに寄せられたトラブル事例です。
「どんなものでもいいから女性用衣類を売ってほしい」と女性から電話があり、来訪を承諾した。後日来訪があり、着物類を見せたが「アクセサリーや金貨はないか」と男性にせかされ、慌てて叔母の形見や亡夫からもらった指輪などの貴金属を出した。すると合計1200円の明細書とお金を渡され、物品を持ち帰られた。貴金属を出してしまったことを後悔している。取り戻したい。(70歳代 女性)
・クーリング・オフの説明を受けないまま契約した。契約書に記載された内容もずさん。
・形見の指輪を返してほしいが、転売されてしまった。
・売却を迷っていたら購入業者が1,000 円札を置いて商品を勝手に持ち去ってしまった。
・貴金属はないと伝えたら大声で怒鳴られ、怖い思いをした。
国民生活センターに寄せられた声より引用・一部抜粋
片付けサービスの中でも、業者が訪問する形態に関しては特にトラブル事例が多発しています。
60歳以上の高齢者、特に女性が被害に合う事例が多く、脅しのような形で希望していないものまで買い取られてしまう「押し買い」など悪質な事例も目立ちます。
また、消費者がサービスを必要とする状況の弱みに付け込み、
→引越し時など処分の期限が迫っている
→遺品のため「本人不在」、遠方に住む家族の立ち会いのため対応時間が限られる
→非力な単身者であれば、一度訪問買取と称し家に上がりこんでしまえば強引な手段でも露見為難い
など、消費者に不利な環境でのトラブルが後を絶ちません。
「訪問購入」の年度別相談件数と契約当事者60歳以上の相談件数(国民生活センターデータより)
契約当事者性別(国民生活センターデータより)
出張型の不用品処分、イメージは非常に「悪い」
「顧客先へ出向いての査定・買取などの行為」自体は、違法ではありません。
しかしながら、現在横行している強引なやり口のせいで、一般消費者のイメージはあまり良くはありません。
出張査定や買取行為には、法律で決められたルールが存在します。
業者側でルールが徹底される事は勿論、利用者側にも法律で禁じられた行為と判断する知識を持つことが重要です。
片付けサービスに関連する法律
片付けサービスは、収集、運搬、廃棄、リユース、リサイクルなど複数の要素で成り立っています。
これらを一つに総称する業種は特に無く、「法令上定義するものが無い業種」という扱いです。
サービス提供を行う業者は、様々な許可が必要と定められています。
正しくサービスを受ける際に必要な条件
・クーリングオフの説明がされている
→出張買取に関しても、クーリングオフが適応されます
・取引に関する全ての事項が書面で交付されている
・店舗がある
→WEBページのみ、トラックで彷徨くのみなどの無店舗営業でトラブルが多発しています
・アポなし訪問を許可しない
→飛び込みで物品の査定や買い取りを持ちかけて来る事は禁じられています
・訪問ついでの買い取り勧誘をしない
→顧客から依頼のあったもの以外の査定は法律で禁じられています
例:査定から買取の勧誘× 査定依頼した時は許可されるのは査定行為のみとなります。
・回収業には一般廃棄物収集運搬業許可または、産業廃棄物収集運搬許可が必要です。
・リサイクルショップなどの中古販売業には、古物商の許可が必要です。
・依頼を受け依頼者宅などを訪問する出張買取には、行商従業者証が必要です。
改めて見ると、かなり詳細に訪問業者の行為は制限されており、消費者が守られている事が分かります。
しかし、これがなかなか周知されていないのが現状です。
消費者へ上記のような細かな条件が知られていない事を逆手に取り、強引な手段に出るのも悪徳業者の特徴でもあります。
また、こういった片付けサービスを利用する際には「複数の見積もりをとり判断したい」という方も多いと思います。
複数の業者を見つけ、先に述べたような「法律を守る業者かどうか」を判断した上で納得の価格へ辿り着くのはかなり骨の折れる行為です。
このような高いハードルの結果、「不用品を手放したい一心でつい高額を支払ってしまった…」と言った出来事に繋がってしまうのかもしれません。
時代と価値観の変化と共に求められるサービス
家族の形の変化や単身世帯の増加、高齢化社会に伴い片付けサービスの需要は年々増しています。
また、世界全体が持続性ある社会に向けて動き出した事で、持て余されていた不用品について再注目される機会も多くなってきています。
本来であれば社会・消費者・事業者共に良いサイクルを生み出す事の出来るのが片付けサービスです。
片付けサービス業界の成熟度と共に「消費者にも分かりやすい判断基準」、「法令遵守とクリーンなイメージを育てる事業者」が、必要不可欠です。
参考記事: