【ミニコラム】プラスチックとゼロ・ウェイスト
Reuse for the Future2021-06-21
みなさんが日頃から頑張っているゴミの分別。
例えばペットボトルなら、決まった曜日にゴミに出したり、街中の専用ゴミ箱に捨てたり…
それらがその後どのように処理されるのかはご存知でしょうか?
「リサイクルされているのでしょ?」と今、心の中で思ったあなた。
実はあなたが捨てたそのペットボトルが、地球上の誰かを苦しめているかもしれません。
まずはこちらの短い動画をご覧ください。
英語で流れますが、映像を見るだけでもいくらか読み取れるはず。
動画の中にあった大量のプラスチックは、イギリスが1日に他国に廃棄している(輸出している)プラスチックの量です。
メディアなどでもあまり公に扱われませんが、実は日本でも行われているプラスチック輸出。
今回はそれが及ぼす影響とプラスチックを取り巻く問題、今後の改善策について一緒に考えていきたいと思います。
プラスチック輸出の実情
JETRO(日本貿易振興機構)が出す資料によると、昨年2020年の日本の廃プラスチック量は8.6%減少したとのこと。
しかしそれでもその量はなんと82万トン。
確かに4年前よりは格段に減っています。
しかし、他国にゴミを捨てているという事実は決して喜ばしくありません。
(引用:ジェトロ「ビジネス短信」添付資料 表 日本の廃プラスチック輸出量の推移 (単位:万トン))
プラスチックの「輸出」と聞くと、「じゃあ他国でリサイクルしているんだね!」という印象を持ってしまいそうですが、実際はそうではありません。
世界でリサイクルできているプラスチックの量は2015年時点でたった9%※1。
その他の大部分が廃棄されているのです。
しかも輸出した先の国では適切な処理をする設備などないことがほとんど。
そこにいる人々の生活や環境、生物に多大なる悪影響を及ぼしています。
(※1 参考:Geyer et al : Production, use, and fate of all plastics ever made, Science (2017))
こちらのイギリスBBCのニュース映像をご覧ください。
UK plastic for “recycling” dumped and burned in Turkey – BBC News
実際の現場映像を見ると、かなりショッキングです。
イギリスで発生したプラスチックがトルコへ輸出され、捨てられ、燃やされています。
燃やせばその火は2週間続き、黒煙が街を覆ってしまう状態。
人々の健康への影響もかなり懸念され、環境被害も深刻なものです。
プラスチックの脅威を強く感じるニュースではないでしょうか。
プラスチックを取り巻く問題
プラスチックを巡っては、他にも海洋プラスチックゴミや枯渇性資源の使用、温室効果ガスの排出など様々な問題があります。
日本でも記憶に新しいレジ袋有料化ですが、その話題と合わせてメディアでも海洋プラスチックゴミの話題が取り上げられました。
なんと、保護されたウミガメが1か月以上もプラスチックゴミを排出し続けたというニュースも。
自然環境保護連合(ICUN)が2020年1月に出した資料『The marine plastic footprint』によると、世界では年間4億1500万トンものプラスチックが生産され、そのうちの3%にあたる1200万トンが海へ流出してしまっているとのこと。
たった3%かと感じる人もいるかもしれませんが、数字の印象に惑わされてはいけません。
この量の人工物が毎年海に流出していて、生態系や環境に影響しないわけがないのです。
プラスチックの分解には時間がかかるため、プラスチックゴミは海面を覆うように長期間浮遊し続けます。
さらに、海を浮遊し続けるうちに細かく砕けてマイクロプラスチックとなります。
そうなるとますます回収は困難です。
それは魚の体内に入り、その魚を人間が食べる事で、人間の体内へ蓄積されていくのです。
身から出た錆とも言えるこの展開。
プラスチックを食べていると考えると、それだけでゾッとしますよね。
炭酸水ブランド「ソーダストリーム株式会社」が以前全国紙や雑誌に打ち出した広告。
(引用:SodaStream、ペットボトル汚染の削減を啓蒙する「プラスチック寿司」広告のビジュアルを公開)
広めようゼロ・ウェイスト〜Loopの取り組み〜
エコバッグの利用が浸透しつつある昨今ですが、プラスチックの生産・消費の減量に向けて、まだまだ積極的な取り組みが必要です。
そこで昨今注目されているのが「ゼロ・ウェイスト(zero waste)」への取り組み。
英語を直訳すると、「ごみゼロ・無駄ゼロ・浪費ゼロ」というような意味です。
そのゼロウェイストへの取り組みの一つとして、見直されているのが容器のリユースです。
例えば、今年2021年の春から日本にも上陸した「Loop」。
これまで使い捨てだった容器を再生可能な容器に置き換える循環型のプラットフォームで、日本企業としてはイオンが初の小売店として参加しています。
(引用:Loop/Loop参加店舗)
江戸時代から昭和にかけては日本でも、量り売りや容器・空き瓶の再利用は一般的でした。
瓶をお店に返却すれば返金されたり、お豆腐屋さんには容器を持参したりなんてこともあったものです。
それが時代の流れとともに、いつしか利便性や衛生面を重視した小包装・使い捨てが当たり前となり、一昔前のリユースではなくリサイクルの推進が行われるようになりました。
しかし、先に述べたようにリサイクルができているのもごく一部で、リサイクルをするにもたくさんある工程の中で、いくらか環境に負担をかけてしまいます。
Loopは今一度、なぜ容器の再利用が廃れてしまったのかを見直して、そこでの問題点をクリアしながらシステムを構築しました。
リユースする容器はスタイリッシュでおしゃれなものばかり。
回収から洗浄も、消費者に手間や負担をかけない方法で行われます。
利便性を突き詰めてしまった消費者には、「無理なく続けられる」というのが次世代のエコなのかもしれません。
プラスチック製品の削減
先ほどから動画で共有してきたイギリスについてですが、メディアでプラスチック問題を取り上げるだけあり、数年前からプラスチック削減への取り組みを意欲的に行っています。
街中や公共の場に無料の給水機を設置したり、飲食店からプラスチック容器や袋は消えて行ったり、様々な取り組みが進められているのです。
プラスチックのストローやマドラー、プラスチック芯を使用した綿棒などは2020年10月より流通が禁止されました。
イングランドでは毎年、47億本のプラスチック製ストロー、3億1,600万本のマドラー、18億本の綿棒が使用されていると推定されており、これらの使い捨て製品の供給を止めることで、海洋生物を保護する。
(参考・引用: イギリス、プラスチック製のストロー、マドラー、綿棒の流通禁止を発表)
この取り決めで実際にポイ捨てされるプラスチック綿棒が減少したとのこと。
レジ袋の有料化が発表された日本でも賛否両論、反発はありましたが、1年が経過した今ではごくごく当たり前となりましたよね。
このコロナ禍においてはさらに利便性や清潔さを求めてしまう傾向にあるかもしれませんが、方法次第でそれらの障害をクリアしたリユースの道は望めるはず。
まずは少し日頃の自分自身の行動を振り返ってみると思いがけないところに「ウェイスト(無駄)」が隠れているかも知れません。
便利なサービスやグッズなどもうまく利用しながら、「ゼロ・ウェイスト」な生活を目指していきたいですね◎
日常の生活で気軽に取り組める活動については、こちらでご紹介しています。
是非あわせてご覧ください。
→【ミニコラム】 世界アースデイと私たちにできること