【クーボンの海外リユース探訪記 Vol.41】ヨーロッパ編 ー フランス4
コラム海外リユース探訪記2024-10-16
この連載は、世界を股にかけた循環型社会を作るために、弊社代表の大久保が見てきた海外のリユース情報や旅行記をお届けするコラムです。
最新の連載はリユース経済新聞の紙面で読むことができます。
目次
メゾン・エ・オブジェにみるローカライズの課題
欧州最大のデザインイベント「メゾン・エ・オブジェ」をレポート。
世界中からデザイナーや企業が集うこの超大規模な見本市は、世界中のありとあらゆる問題に対し、解決案的なデザインを提示しています。
「西洋と東洋の融和」、「『身体』と『環境』のウェルネスの両立」や「『消費者』と『生産者』のつながり」等、SDGsの理念やリユースの意義にも共通するテーマの作品も多数展示されていました。
日本企業の課題は文化理解の深度
深く考えさせられたのが「ローカライズ(現地の事情に合わせて製品をカスタマイズすること)」についてです。欧州の企業が版権だけを買い取って製造した日本のキャラクターグッズや和風雑貨を見かけましたが、その背景には、「西洋で売るならヨーロッパの人間に任せた方が信頼される」といった発想もうかがえます。他方では、ローカライズに関して日本人のノウハウが乏しい事も理由のようです。
日本人のローカライズはなぜうまくいかないのか
どうやら日本人というのは、世界的に見てもローカライズがあまり上手くないようで、過去にさまざまな企業が西洋に進出し失敗しています。その理由として挙げられるのが「変えてはいけない要素を変えてしまう」という点です。
例えば、和服のブランドが海外出店の際に、現地の伝統衣装風にアレンジするのはあまり得策とは言えません。自分たちの自慢の商品の本質を捻じ曲げるようなローカライズは、没個性でバランスの悪い商品を生み出すだけでしょう。
上部だけのプロモーションは「文化盗用」に繋がる
また、海外の人々にアピールするためのプロモーションが「文化盗用」と見なされ、批判の的となってしまうこともあります。例えば、畳の上を靴で歩かせるように、ただ互いの文化を取って付けたような形で流用したプロモーションは、その文化圏で暮らす人々や批評家から「我々の文化を愚弄している」と怒りを買うこともあり得ます。
特に、ヨーロッパはこうした文化盗用に関して非常に神経質で、過去にはイザベルマランやグッチ等の有名ブランドが批判の対象となった事例もあります。
アップサイクル着物の可能性に期待
州の人々の多くは、日本の文化や商品が決して「嫌い」というわけではありません。ですが、残念なことに、日本人が日本発のブランドを売ろうと努力しても、そこにヨーロッパの国の人々が携わっていなければ、現地の人々の多くはその時点で興味を失ってしまうのです。
ただ、私としては「だからこそ!」とアイデアを練るきっかけとなりました。例えば、フランスをはじめとした欧州では着物が人気で、個人経営の古着屋にもたくさんの着物が売られています。そこに対して日本市場で眠っている古い着物を活用して何かできないか、と考えています。
>>アップサイクルについては、この記事内でも詳しく紹介しています
アップサイクルによって着物本来の価値を失うことなく、なおかつ新たな魅力を付加した上で、それらをブランドとして広めるようなチャレンジができれば、面白いことになりそうです。日本にとっても欧州にとっても、世界中にとっても良い影響を与えられそうな気がします。
筆者紹介
株式会社ワサビ
代表取締役 大久保裕史(オオクボ・ヒロシ)
1975年大阪府出身。リユースのキャリアは前職の小さな古着屋からスタートし、EC興隆期前にノウハウを積み重ね、楽天市場中古部門の初代ショップ・オブ・ザ・イヤーを2年連続受賞。2012年に株式会社ワサビを創業。現在は日本だけでなく海外 × リユース × technologyこの3つに特化した一元管理システムの開発から、日本から世界へとワールドワイドなネットワークでマーケットを拡大中