インドでAmazonと拮抗するEC — Flipkart(フリップカート)
海外EC調査部2022-03-16
Flipkartの概要
Flipkart(フリップカート)はインドを代表するEコマースマーケットプレイスです。
同社は2007年に元アマゾンの社員であるサチン・バンサルとビニー・バンサルによって設立されました。
設立当初はオンライン書籍販売から始まり、その後、音楽、映画、電子機器、生活用品、ファッション、食料品にいたるまで取り扱いカテゴリーを順調に増やし、現在は80以上の商品カテゴリーを提供しています。
企業規模は、従業員3万人、登録販売者数は30万以上、登録顧客は3億5,000万以上、倉庫数は20拠点超え、2021年時点で時価総額は378億米ドルに達しています。
また、2018年、ウォルマートはFlipkartの約77%の株式を約160億米ドルで取得しました。
Flipkartのサービス内容とは
Flipkartで売れ筋の商品はおもちゃ・ベビー用品、スポーツ・フィットネス用品、家具、自動車車内用品、クーラーなどの電化製品、美容・スキンケア商品、健康食品、食料品となっています。
特に食料品とファッション分野の成長が著しく、今後の売り上げの柱となっていくと予想されます。
実際の商品の価格帯は、例えばiphone SE 64Gは29,999ルピー、日本円にすると45,000円ほどで販売されています(1ルピー1.5円にて算出)。
日本のアップル公式ストアでは5万円台後半ですので若干お安めの設定です。
雑貨はタッパーウェアが3個セットで50円ほど、女性用トレーニングスパッツは500円ほどと生活用品などについては非常にリーズナブルな価格設定となっています。
Flipkartは一年中多様なセールを行っており、2022年度はその回数は60回を超える予定です。
多くはカテゴリー別の割引セールですが、最も大きなセールは10月に行われるビッグビリオンデイズセールです。
ほぼ全ての商品が対象となり、価格は50~80%オフと、消費者から最も人気のあるセールです。
購入時の支払い手段は、クレジットカード、インターネットバンキング、ギフトカード、代金引換、デジタルウォレットと多様な選択肢があります。
また、配送料は販売業者によって異なります。
商品を購入すると100ルピーの買い物ごとに2枚のスーパーコインを受け取ることができ、コインが200枚に達すると Flipkart Plusメンバーシップにアップグレードされます。
アップグレード後は、一部送料無料やセールへ一足早くアクセスできるなどの特典が付与されます。
このスーパーコインは1枚1ルピーとして使うこともできます。
基本的な有効期限は1年間ですが、 Flipkart Plusメンバーである場合は失効することはありません。
返品については商品の種類によって、返金が可能な場合、交換だけ可能な場合、返品自体受け付けていない商品があります。
そのため、商品によりFlipkartのホームページにてチェックする必要があります。
また、インド国内の主要都市を対象にFlipkart quickというサービスを2020年よりスタートしており、トイレタリー・電子機器・家電製品・食料品・スポーツ用品などを注文から90分以内で受け取ることができます。現在は10都市限定でのサービスですが、2022年度末までには200の都市で展開していく計画です。
今後のFlipkartの展望は
インドではCOVID-19のパンデミックにより、都市部だけでなく地方都市にもオンラインショッピングが浸透しました。
ロックダウンの前後で比較するとFlipkartの新規ユーザーは65%の増加、販売者数も35%の増加を見せています。
また、インドのeコマースは今後数年間で毎年25%〜30%成長し、2026年度までに1,200〜1,400億ドルに達すると言われています。
FlipkartとAmazonがインドのeコマースを大きく独占している現状では今後もFlipkartの売上は右肩上がりが予測されます。
実際Flipkartは2021年、ウォルマートやソフトバンクなどから36億米ドルの資金を調達し、次なる2022年末には新規株式公開(IPO)を行う予定であると、最高経営責任者(CEO)は発信しています。
日本からの出店
現在日本からの出店はシステム上できません。
登録には現地の携帯電話番号、税登録証明、法人設立証明書が必要となります。
現地にパートナーを作る場合は納品という形で事業にしていくことができますが、ショップを自身で構えることは困難です。
まとめ
以上のように、Flipkartは取り扱い商品や支払い手段を幅広く設定することによって、より多くの顧客層を取り込むことに注力しているように見受けられます。
また、以前まで実店舗での購買が大部分を占めていたインド小売業界ですが、eコマースの利便性をアピールすることにより、パンデミック終息後も顧客が離れない仕組みづくりを構築しているものと思われます。
長年に渡り資金調達を繰り返してきたFlipkartですが、今後はIPOの実施により更に強固な経営基盤を築き上げながら成長していくでしょう。