海外EC調査部

スニーカーの株式市場? stockX

海外EC調査部2021-12-07

概要

StockX(以下ストックエックス)はアメリカのトレンド商品のリセールマーケットプレイスです。
2012年、共同創業者のJosh Luber(ジョシュ・ルーバー)は趣味の一環として「campless.com」という情報ウェブサイトを始めました。このウェブサイトでは、人気スニーカーの価格情報などが掲載されていました。
当時、多くの人がこのサイトを利用して売りたいスニーカーの価格を決めて、eBayなどのマーケットプレイスで販売していました。
人気や希少なトレンド商品に膨大なビジネスチャンスが潜んでいることを気付き、NBA(全米プロバスケットボール協会)のチームCleveland Cavaliers(クリーブランド・キャバリアーズ)のオーナーDan Gilbert(ダン・ギルベルト)がCamplessを買収。
2015年にはストックエックスがベンチャー企業として正式に創立されました。

(ストックエックスの前身「campless.com」。引用:https://techcrunch.com/2015/09/17/sneaker-website-campless-relocates-to-detroit-following-investment-by-dan-gilbert/

ストックエックスによると、創立以来の流通取引総額(GMV)は38億ドル(約4,385億円)に達し、平均月間訪問数は2,500万人となりました。
今の時点では、社員数は1,000人を超え、鑑定センターと持ち込み施設11ヶ所を保有しています。

(ストックエックスが扱うトレンド商品。引用:https://stockx.com/ja-jp

スニーカー以外には、ストリートウェア、エレクトロニクス、トレーディングカード、コレクティブル、ハンドバッグと腕時計といったトレンドアイテムも取り扱っています。

ビジネスモデル

ストックエックスは特定なトレンドアイテムのマーケットプレイスを作り上げ、オンライン取引のシステムを提供し、取引成立する際に一定額の取引手数料と支払い手数料を取ります。
販売者はまずストックエックスのデータベースを使って、売りたい商品を検索する必要があります。
もしその商品が該当する商品(ストックエックスが扱う型番)であれば、サイズなどの情報と希望の最低入札価格などをいれ簡単に出品ができます。
写真撮影や個人情報の開示、購入希望者とのやり取りの手間が一切ありません。

取引が成立したら、販売者が商品をストックエックスの鑑定センターに発送します。
もし鑑定によって、基準に満たさない場合、商品は販売者に返還されます。
(※もちろん、一定の鑑定手数料は発生します。)
もし商品が鑑定を通ったら、鑑定センターから買い手へ発送し、鑑定完了と同時にストックエックスが販売代金を販売者に支払います。

(手数料表。引用:https://stockx.com/about/ja-jp/selling-ja-jp/

上の表のように、取引手数料や特典はランクによって違います。

権威ある鑑定

ストックエックスで販売できるのはブランド正規品で、しかも新品と未使用品のみ(状況によって付属品も必要)です。
出品は匿名のため、購入者へ贋作や使用済みなどの不合格品を届けないために、厳密な鑑定が必要です。
スニーカーリセール業界で一番の経験と知識で、権威のある鑑定工程を作りました。

(ストックエックスの鑑定センターの一角。引用:https://www.businessinsider.com/stockx-experiencing-major-delays-in-sneaker-shipments-and-payouts-2020-8

偽物が蔓延するスニーカーやストリートウェア業界で、贋作を見極めるスキルは極めて重要です。
ストックエックスではこれまでに届いた贋作からデータを蓄積し、世界中の贋作技術についての総合データベースを構築しています。
データベースは日々更新され、鑑定現場で活用されています。
ストックエックスによると、数千万点もの鑑定実績を積み上げるなかで、99.95%の精度を持っています。

(ストックエックス専用の鑑定済みバッジ。裏側はQRコードが付いています。引用:https://stockx.com/about/ja-jp/authentication-ja-jp/

今の時点でストックエックスが鑑定センターを世界中で合計11ヶ所を保有しています。

スニーカーの「株式市場」

「Stock」は英語で「株式」や「(販売目的の)在庫(商)品」の意味合いを持っています。
「X」は英語で一般に「exchange(物の交換、商品の取引や取引市場などを意味します)」の略語として使われています。
両方の組み合わせ「StockX」には、おそらくスニーカーの「株式市場」を作ろうという創業の目標が入っているのでしょう。
ストックエックスの取引プラットホームの極意はDynamic Pricing Mechanism(ダイナミックプライシングメカニズム)というシステムです。
簡単に言えば、買い手と売り手、需要と供給を効率的に繋ぐ方法です。
株式市場のように、ストックエックスができるだけ多い商品需給についての情報を集め、リアルタイムの価格変動を反映しています。

(Nike Air Max 1 Patta Waves Noise Aquaのストックエックスでの価格推移です。引用:https://stockx.com/ja-jp/sneakers

膨大なデータベースを持つストックエックスを利用して、買い手も売り手も自分がほしい商品に関する最新情報を手に入れられます。
この数年の発展によって、ストックエックスはもうすでにトレンドアイテム再販業界の一番影響力のある「専門家」となっています。

グローバル戦略

スニーカーなどのトレンド商品の市場はNike(ナイキ)やAdidas(アディダス)のような大手企業の業務展開によって国際化しているので、それを合わせて世界規模でリセールサービスを提供するのは当然なことだと思います。
ストックエックスは現時点で200ヶ国でサービスを提供しています。
8種類以上の言語を対応できます。

近年アジアの売上が急成長したことを踏まえ、2020年と2021年、香港と韓国に相次いで鑑定センターが設立されました。
これによって、アジア圏の業務が効率的になりました。
ストリート文化の世界範囲での広がりに伴って、トレンドアイテムの需要はこれからも増えるでしょう。

コミュニティへの取り組み

(ストックエックスのコミュニティー活動。引用:https://stockx.com/about/ja-jp/company-ja-jp/

トレンド商品のリセールマーケットは文化や芸術と密接に関わる業界のため、そうしたコミュニティと共に発展するのも企業として重要なことです。
ストックエックスは元よりアートコミュニティとは密接な関係にあり、奨学金、音楽教育プログラムなどの取り組みをはじめ、若者とアートやカルチャーをつなげることを目的とした団体を支援しています。
ストックエックスの利用者の7割は35歳未満の若年層を軸に構成されています。
トレンド商品に関連するスポーツ、例えばスケートボードやバスケットボールなどの活動を支援しています。

慈善団体を通じて、サステナビリティ活動への投資にも努め、IT教育や人種差別解消への取り組みも行っています。

日本からの購入と出品

ストックエックスはグローバルサービスのため、もちろん日本からの購入も出品もできます。
まずは出品の流れを紹介しましょう。

アプリ、あるいはウェブサイトを使って、出品したい商品のキーワードを入力して、その商品が取り扱う商品かどうかを確認します。
もしストックエックスのデータベースにあったら、最低出品額を確定してから出品が簡単にできます。
オークションと「今すぐ売る」という選択肢があるので、自分の希望する販売方法が選べます。
取引成立の場合には、鑑定センターへの発送依頼が届きます。
その場合には、発送手順に従って販売完了から2営業日以内に発送しなければなりません。
発送後は鑑定結果を待つだけです。
鑑定を通れば、代金がストックエックスから支払われます。

購入の場合には、「入札する」と「すぐ買う」二つの方法があります。

入札にはほかのオークションアプリと同じのように、入札価格と入札期間を入力して、売り手と買い手の希望額がマッチすると取引が成立します。
「すぐ買う」には現時点での最高入札額で購入できます。

注意すべき点は以下の通りです:

  • ストックエックスの販売は匿名なので、すべての購入商品の交換と返品はできません。
  • 日本での決済方法はクレジットカードとPayPal(ペイパル)のみです。
  • 日本での配送は全てDHLと提携しています。一般のサイズと重さの商品の送料は1,000円です。商品が海外から発送されるので、時間がかかります。
    ストックエックスによると、配送は注文日から平均でおおよそ8〜15営業日となります。
  • 輸入税と消費税などは、買い手の国の法律に基づき算定され、送料と同じのように買い手が負担します。

結論

ストックエックスは典型的なアメリカ式のITベンチャー企業です。
画期的なアイデアをもって、投資者の資金を集め、グローバル市場への開拓と進出する見本の如く発展をしました。
スニーカーだけに限らず、ゲーム機などある分野に特化し「専門家」になるための「一心精進」と「器用貧乏」にならない決意は、ストックエックスの成功にとって不可欠な要素と考えています。

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