フランスでAmazonに次ぐ大手ECモール Cdiscount
海外EC調査部2021-08-30
日本でポピュラーなECモールと言えば、Amazon、楽天、Yahoo!などが挙げられるだろう。
日常生活の中で必要となる日用消費財(FMCG)は、この3つのモールを探せばほぼ見つかる。
中でも、取り扱う商品の豊富さや対応国の多さからAmazonの世界シェアは確固たるものであるが、世界各国にはその国発のECモール(日本で言う楽天市場のようなモール)が数多くある。
例えば、ヨーロッパでは一体どのモールがよく利用されているのだろうか。
Ecommerce News Europeによると、フランスにおける日用消費財(FMCG)のオンライン購入率は、ヨーロッパの中でも特に高い割合となっているようだ。
そこで、今回は数あるヨーロッパ諸国の中でも、フランスで利用されているECモールに着目していきたい。
目次
フランス発の最大手 Cdiscount
上の表はフランスでのECのユニークビジター数(一定期間内にウェブサイトやページに訪問した人の数を表す。一定期間内であれば、同じウェブサイトに同じユーザーが訪問した場合もユニークビジター数は「1」とカウントされる。)をランキング形式で表したものである。
1位はやはり世界最大手のAmazon、2位が今回取り上げるCdiscountだ。
Cdiscountは、フランスが起源のECサイトとしてはトップである。
Cdiscountの起源
Cdiscountはフランス・ボルドーの地で、シャルル三兄弟によって1998年に設立された。
彼らは当初、DVDを1ユーロで販売することで、誰もが文化的な製品に触れられるようになれば、と考えた。
それがCdiscountの始まりである。
今やフランス第2位となるほど、巨大マーケットプレイスへと変貌を遂げたCdiscount。
その成長の軌跡を辿ると、同社は2000年2月より、フランス大手企業「カジノ・グループ」のeコマース部門であるCnova(シーノヴァ)の子会社となった。
その後、2011年1月、カジノ・グループはシャルル兄弟の株式を買い取って資本の99.6%を保有。
当初は商品を販売する小売業者だったCdiscountだが、ちょうどその頃にオンラインマーケットプレイスを立ち上げた。
そして現在では、フランスのみならず、ベルギー、ドイツ、スペイン、イタリア、ルクセンブルグなどのヨーロッパ諸国でも事業を展開している。
今後のCdiscount
Cdiscountのサイトには毎月2000万人のユーザーがアクセスしている。
2019年からは、ルーマニア、イタリア、ドイツのパートナーと共に、2億3千万人もの消費者の潜在的市場である欧州のEコマースプラットフォームと業務提携し、市場を展開。
さらに、今年の1月にも、他の小売業者が利用できるオンライン・マーケットプレイス・ソリューションを立ち上げると発表した。
マーケットプレイスの立ち上げからちょうど10年という今、このように新たなBtoB戦略も打ち出している。
今後のさらなる展開にも目が離せない。
取り扱う商品のフランスらしさ 〜Second Lifeサービス〜
先述の通り、Cdiscountは小売店としてスタートし、現在はフランスで1、2を争う巨大マーケットプレイスへと成長した。フランスの5,000社を含む約12,000社のベンダーが参加し、およそ17のカテゴリーにわたって電子機器や家電製品、ファッション・美容関連、そしてワイン(アルコール類)など、様々な商品を最大7,000万点販売している。(参考:Ecommerce news Cdiscount Company information)
中でも興味深い商品カテゴリーが「中古(フランス語ではSeconde mainと表記)」である。
上の画像はCdiscountの公式サイトを自動翻訳で表示したものだ。その「中古」のタグ内を見てみると、「Second Lifeサービス」というものが目に入る。
Cdiscountは製品寿命を伸ばし、より責任ある消費に貢献するため、中古品に対する修理や診断サービスも提供している。
このサービスを提供するために、Cdiscountは修理サービスを得意とする他社と提携。
チュートリアル動画や、無料診断、ビデオ修理支援サービス、必要パーツの送付など、様々なケースに対応できるサポートサービスを揃え、不要になった製品のリユースを促進しているのだ。
フランスでは自分で修繕するという文化が古くから根付いている。
詳しくは、「【ミニコラム】フランスのブリコラージュ(Bricolage)って?」をご覧いただきたい。
専門業者に全てをお任せするのではなく、彼らの知識と知恵を借りながら自分たちで修理してしまおうという考えのもとにある、実にフランスらしいサービスではないだろうか。
専門業者に修理を依頼するとなると、修理規模やその複雑さにもよるが、かなりの割合で高額な請求となることが多いだろう。
となれば、「捨てて買い換えた方が安い」「わざわざ高額の修理代を払って使い続けたり、売ったりすることもない」という考えになるのが消費者側の心理として一般的ではないだろうか。(少なくとも日本在住の一消費者としてはそのように感じる)
しかし、この「Second Lifeサービス」を利用すれば、業者に依頼するよりも速く、そして家計にも環境にも優しく、製品を使い続けられるようになる。
その上、個人間や専門家への販売、寄付という選択肢も今よりもさらに広がることだろう。
持続可能な社会を築いていくためには、一人一人が責任のある消費をすること、製品の使用寿命を伸ばすことが不可欠だ。
この修理・診断サービスはシンプルでありながらも、それらの活動に大いに貢献できると言えるだろう。
(参考:Cdiscount Reprise, recyclage ou réemploi : pour vos anciens produits DEEE et DEA)
日本からの出品・販売も可能
Cdiscountには日本から出品・販売することも可能である。
登録は無料で行うことができ、セラー申請方法に関しては、JETROが細かな案内を提供している。
ただし、こちらは2019年時点の情報のため最新情報を随時確認していただきたい。
セラー申請方法の詳細はこちらJETRO フランスにおける 越境ECに関する調査 (2019年1月)
Cdiscountでの販売者になると、月額€39.99のストア手数料と、商品が売れた際のカテゴリーごとの販売手数料を支払う形となる。
また、販売手数料は商品のカテゴリーごとに異なるだけでなく、新品か中古品かでも割合が異なり、新品と比べて中古品の方が2%ほど手数料率が増加する。(参考:Our prices – Cdiscount)
そして、欧州では「WEEE(電気電子機器廃棄物)指令」に従う必要があるため、電子機器類の販売を考えている場合は要注意だ。
―WEEE指令とは
「WEEE(電気電子機器廃棄物)の発生を抑制し、再利用やリサイクルを促進して廃棄されるWEEEの量を削減することで、加盟国および生産者にWEEEの回収・リサイクルシステムの構築・費用負担を義務付け」るためのものである。(引用:JETRO WEEE(電気電子廃棄物)指令の概要:EU )
WEEEが定義する生産者には、製造者だけでなく販売者なども含まれる。
これからの地球環境を考え、責任ある選択をしていくためにも、人ごととは思わずしっかりと確認しておきたい。
他にもCdiscountでの販売を禁止している商品もあるので、出品の際にはそれらもあわせて事前にチェックしておこう。
一説には、Cdiscountの市場顧客は、家電製品や、ハイテク電子機器、コンピュータ製品などに興味を持っているという情報もある。(参考:Ced Commerce, Rule eCommerce in France by Learning How to sell on Cdiscount Marketplace)
新たな市場開拓を目指す方は、ぜひヨーロッパの消費者動向を意識しながら、Cdiscountでの販売を考えてみてはいかがだろうか。