中国のEコマースの紹介―広がりを見せるライブコマース
海外EC調査部2022-07-19
近年、中国のEコマースプラットフォームでは、ライブ配信で自ら商品を使用し、セールスプロモーションを行うユーザーが多く見られます。
商品開発を行う企業の担当者や、ライブコマースを専門に仕事として請け負う業者も現れ、新たなビジネスモデルとして流行を見せています。
さらに、芸能人など著名人がライブ配信を行い、自分が持つ知名度を活かし視聴者を呼び込む事でアクセス数を増やすという方法が、ライブコマースの中で重要な施策の一つとなっています。
ライブコマースとは
消費者へ向け商品のメリットや使用感をアピールするのは、今やモールなどの店頭のみではありません。中国では、オンラインのライブ配信でセールスプロモーションを行う方法が確立されています。
店舗の運営企業、または商品ブランドの経営者たちは、ライブコマースの専門業者(インフルエンサー)と契約し、ライブでの宣伝を進めています。
今では多くのインフルエンサーたちが販売実績をあげています。
ライブコマースでのセールスプロモーションとは、一言で言うとリアルタイムライブを利用し消費者に商品を紹介するということです。
アパレルなら試着、食品なら試食、電化製品なら実際に使って見せ、メリットをアピールします。
自らのトークで巧みに商品の良さを表現し、観客の購買意欲を煽るのです。
またチャットに出てくる観客の要望に応じ、商品のあらゆる角度から映したり、使用する様子などを紹介します。
そして、ライブ配信中にリアルタイムでの限定価格販売などのタイムセールを行い、「今ここでしか買えない最安値」などで販売促進を行います。
2021年各ライブコマースプラットフォームの「達人(プロフェッショナル)」ランキングを見ると、1位はタオバオライブのユーザー、2位は快手(kuaishou)のユーザーとなっています。1位である李佳琦には、1億7千万人以上のフォロワーがいます。
そして、二人の2021年の純収入は、1位の李佳琦が18億元(約360億円)2位の辛巴(辛有志)が13億元(約260億円)でした。
ライブコマースのプラットフォーム
タオバオ
タオバオは中国最大のEコマースプラットフォームとして、ライブコマースも重視しています。ライブコマース分野、中国消費者協会が2020年3月に発表した「ライブコマースショッピング消費者満足度オンライン調査報告」によれば、消費者がよく利用するライブコマースのプラットフォームは、淘宝(タオバオ)(68.5%)でトップに立っています。(なお、2位はTikTok(抖音)(57.8%)、3位は快手(Kwai)(41.0%))
前述の2021年ライブコマースのプロランキングの上位二人トップは、このタオバオライブで活躍しているユーザーです。
注目すべき点は、ランキングの順位を決めるのは「ファンの数ではなく売上高にある」という事です。タオバオはライブ配信機能以上に『商品を販売する』機能が重視され、整備されています。
こういった点から、商品の販売数、売上金額はタオバオが高くなる傾向にあるのです。
現在、タオバオのモバイルアプリでは、ライブコマース専用の画面に加え、他の商品紹介もしくは店舗紹介のページにもライブコマースへアクセス出来る仕組みがあります。
TikTok(抖音)
TikTokは、中国発の世界的に有名なショートビデオプラットフォームです。
膨大なユーザー数を誇り、ライブコマースとしても絶好の場と言えます。
多数のフォロワーを持つ人気投稿者「Tik Toker」たちは、TikTokのライブ支援キャンペーン(2020年~)を利用し、自分のフォロワーをライブ配信へ誘導する事ができます。
また、通販機能を付けた動画もアップできます。元々動画のプラットフォームであるTikTokは、ライブコマースを提供以来、急速に発展をしています。
急激な発展にはデメリットも伴い、「フォロワー数1,000人以下のアカウントは通販機能付きの動画を週1本しかアップできない」などの制限や、規則も追加されています。
ライブコマース配信者の収入ランキングトップ100でもTikTok(抖音)の配信者が多くを占めています。
快手(Kwai)
快手(kuaishou)は、2011年からサービスを提供している、TikTok(抖音)と似たようなショート動画をアップロードできるプラットフォームです。Tiktokは比較的都市部の人々に人気がある一方、快手(Kwai)は、どちらかというと農村部のユーザーが多くなっています。
小紅書(Red)
「中国のEコマースの紹介―ソーシャル型の小紅書(RED)と微店(YouShop)」で紹介した小紅書(RED)には、2020年4月にライブコマース機能が追加されました。
今まで、利用者の投稿で商品の宣伝を行ってきたREDは、現在Eコマースとして進化しつつあります。ところが、REDではライブコマースプラットフォームに適しているかどうかについては、賛否があります。
例えばREDで投稿し商品宣伝を行う利用者は多く、「交流があるからこそ効果が得られる」という特徴があります。
しかし、現状REDでのライブコマース利用者は、フォロワー数が少ない傾向にあります。また、ライブコマース配信者の収入ランキングトップ100には一人も入っていない状況です。
そのため、動画の視聴者数が極めて重要であるライブコマースにとっては、REDはそれほど相応しいプラットフォームではない、という指摘もあります。
ライブコマースの現状
ライブコマースのメリットは、ライブ配信でリアルタイムに商品を紹介・使用して見せることで、消費者の共感や信頼が得やすい事にあります。
しかし、配信者の信用が損なわれる出来事や、取り上げた商品の品質に欠陥が見つかった場合、ライブコマースへの信頼性に傷が付き、一気に不信感を持たれる可能性もあるのです。
実際、2020年に収益トップの配信者であった薇娅という人が、2021年12月に脱税に問われ、巨額の罰金(13.4億元(約260億円)が課せられるとともにアカウントが凍結されたという事件もありました。
それでもライブコマースでのセールスプロモーションは、リアルタイムで視聴者と情報を共有し購買意欲を促す、非常に有効な手段です。
活用する上では、宣伝する製品を慎重に選び、配信側も信頼を損なわない振る舞いも重要なポイントとなります。