中国ライブコマース最前線「淘宝直播・抖音直播・快手直播」
海外EC調査部2023-07-19
ライブコマースとは、動画をライブ配信し視聴ユーザーに向けて買い物を促していく方法です。
日本ではまだ浸透しているとは言えませんが、この手法で売り上げを売り上げを伸ばしている中国では、次々に動画配信を行うインフルエンサーが誕生しています。
目次
ライブコマースの最先端・中国の三大勢力「淘宝直播・抖音直播・快手直播」
現在、中国のライブコマースの市場規模は、今年2023年には4.92兆中国元にまで拡大すると予想されています。
2016年に淘宝直播がサービスを開始、2017年に抖音直播がサービスを開始以降、驚異的なスピードで規模が拡大しています。
この市場を牽引しているのが、3つのアプリ「淘宝直播(タオバオライブ)」「抖音直播(DouYinLive)」「快手直播 (KuaiSho)」です。
星图データ(中国市場)の調査によると、2020年9月-2021年3月のGMVは、
淘宝直播(タオバオライブ) 6,500億ドル
快手直播(DouYinLive) 6,169億ドル
抖音直播(KuaiSho) 4,500億ドル
となっています。
淘宝直播(タオバオライブ)
淘宝直播(タオバオライブ)は、中国最大のECアリババグループが提供するライブコマース特化型アプリです。
ちなみに直播とは日本語で「生放送」との事なので、非常にわかりやすい名称ですね。
ユーザーは8億人超え、市場規模は1,000億元と言われています。
1日あたり15万時間ものライブ配信が行われ、ライブ配信者は4,000人、紹介商品数は60万にも上ります。
2019年のダブルイレブン(独身の日)では、取引総額は200億元(1元15.7円換算で約3,140億円)とのことです。
試しに配信中のライブを覗いてみると、オフシーズンの衣類の販売、輸入衣類の販売、子供服、日本の中古ジュエリーの販売なども行われていました。
干物や果物の販売などもあり、ジャンル問わず何でも揃っている印象です。
また配信者も若い女性から男性まで、様々です。
百貨店や商店街で、スマートフォンの画面越しに接客をされていると言ったところでしょうか。
抖音直播(DouYinLive/TikTok)
日本でもお馴染み、ショート動画SNS「TikTok」を開発したByteDance(バイトダンス)の提供するライブコマース特化型アプリです。
日本版TikTokには視聴中に買い物、そのまま決済などの機能はありませんが、中国版の本家TikTokにはEC機能が備わっています。
中国でのメインユーザーは若年層、特に都市部に暮らす若者が中心で、アクティブユーザー数は6億人にも上ります。
またDouYinLiveでは、サービス黎明期にアパレル企業がいち早く参入し、現在も売上を急激に伸ばしています。
元々DouYinには、ユーザーが興味のあるジャンルを特定し、関連する短編動画を次々に再生・カスタマイズしていくレコメンド機能が備わっています。
アパレル企業はこのシステムを活用し、現代の多種多様化する好みや価値観の中で、ブランドの傾向に合致したグループ、トレンドなどを分析し開発を行うことで売上に繋げているのです。
快手直播(KuaiSho/クアイショウ)
中国国内初のショート動画配信サービスである快手(Kuaishou)にライブコマース機能が追加され、スタートしました。
快手が運営するEC快手小店、タオバオなど外部のECへもアクセスを促すことができます。
快手経由のGMV(流通取引総額)は2020年に1,771億人民元(約3兆円)にのぼり、前年比313.7%増加しています。
また最新の2023年第一四半期の時点で1日平均アクティブユーザー数は3億7,430万人、月間アクティブユーザー数は6億5,440万人となっています。
メインユーザーはDouYinLiveと同じく若年層ですが、地方都市に住む人々が多いのが特徴です。
配信ではアパレルやアクセサリー、日用品から果物、お菓子など食品の販売も行われています。
小紅書(RED)ライブ
小紅書は中国版のInstagram的ポジションのアプリです。
10代〜20代女性の美容、グルメ、ライフスタイルなどを投稿共有し合う口コミサイトのような場所です。
投稿から直接商品を購入することも可能で、検索から消費行動まで一連の流れが完結できるようになっています。
先ほど挙げたInstagramでは、紹介されている商品を購入するために外部サイトへリンクさせる必要があること、facebookで商品追加をしなければならないこともあり少々手間がかかります。
小紅書では直接購入ができるため、高い購買意欲を維持したまま消費者を購入へと導くことが可能です。
斗鱼(DOUYU)、bilibili(ビリビリ)ライブ
斗鱼(Douyu TV)、bilibiliライブは共にゲーム実況プレイ配信やアニメ・漫画・ゲーム系のコンテンツ配信として中国で人気のプラットフォームです。
日本で例えるならTwitch、ツイキャス、ニコニコ生放送と言ったところでしょうか。
bilibiliライブは元々、ニコニコ動画に影響を受け作られたサイトのため、コメントの弾幕などニコニコ動画と似たような文化が色濃く反映されています。
こういった類のプラットフォームでは、視聴者は買い物ではなく、いわゆる「投げ銭」で配信者へ応援の意味を込めて金銭をギフトとして送信します。
日本ではまだ根付かないライブコマース
中国では爆発的な広がりを見せているライブコマースですが、日本ではまだまだ、認知度も利用者も配信側も少ないのが現状です。
過去には、日本国内のECでリリースされたライブコマース機能が短期間で廃止になったケースもあり、中国とは大きな差があります。
考えられる理由として、日中の文化的背景、気質の違いなどをいくつか考察しました。
販売商品に対して信頼度の高い日本国民
ECでの買い物に関わらず、商品に対する信頼度が高く、偽物を掴まされるかもしれないという危機感が薄い傾向があるように感じます。
今でこそ日本国内ECでも海外商品が流通し、商品がホンモノかどうか?という意識が芽生えつつありますが、日常的な買い物において常に真贋保証を気にする事は少ないはずです。
ライブコマースでわざわざ購入しなくとも、自分が好きな時に好きなタイミングで購入決断ができる、それが当たり前になっているのです。
偽物に敏感な中国国民性
一方中国では、常にあらゆる商品に偽物が多く出回るという歴史的な背景もあり、本物保証がされ信頼度の高い配信者、配信の時間(ライブコマース)に、大きな価値を見出しているのではないでしょうか。
ライブコマースでは、配信者がリアルタイムで視聴者とコミュニケーションをとり、あらゆる角度から商品を見ることができます。
特に多くの支持者を抱える配信者のライブコマースでは、店頭で視聴者自身の目で見て買う以上に信頼感があるはずです。
またライブ配信によって、その場限りの割引やサービスも受けられることも大きなメリットです。
ライブコマース配信サイト 空白地帯の日本
日本にも美容、日用品などのインフルエンサーは存在します。
しかし、それがライブコマースへ直結していないのが日本の特徴です。
大手ライブコマース専用の配信サイトが未だ存在しておらず、認知度のあるInstagramライブ、tiktok、youtubeなどのサイトでも視聴から即購入に繋がるシステムが確率されていません。
この点は日本で利用者の多いTwitterも同じで、SNSとECが一体化している環境が日本では浸透していません。
昨年利用可能となったfacebookマーケットプレイスも決済機能搭載までは至っておらず、リリースから半年以上経過した今も、日本国内の利用は在住外国人がほとんどです。
商売っ気を忌避する?日本人
信頼感のあるインフルエンサーでも、あまり商売っ気をおもてに出しすぎると避けられる傾向もあります。
これには、店頭の押しの強い店員を避けたり、ネット上のPRマーケティングなどに抵抗感があるSNS利用者が多いことも一因と考えられます。
また、「リアルタイムで一斉に何かを見る」という行動は、特定の趣味(例えば映画・アニメ・ゲーム・漫画・小説・スポーツなど)でこそ顕著な傾向だが、ショッピングにおいて日本では見られない動きです。
一斉視聴という点においては、テレビ番組もリアルタイム視聴が激減しており、決まった時間に視聴するということに相当な価値がなければ、定着は難しく思えます。
中国国内に限らず、多様化する価値観の中で、全ての商品とその背景にある企業を調べ把握することは、非常に難しく困難です。
これから日本でも、ライブコマースの先駆者となるアプリが現れるのか、海外からの参入で状況が変化するのかどうか。
今後も注目の分野です。
参考サイト:
https://live.douyin.com
https://creson.jp/media/tiktok-e-commerce-douyin/
https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/how-tiktok-recommends-videos
https://www.mouse0232.cn/feiguashuju2021fuzhuangduanshipinjizhiboyingxiaobaogao.html
https://china-marketing.jp/glossary/%E6%B7%98%E5%AE%9D%E7%9B%B4%E6%92%AD%EF%BC%88taobao-live%EF%BC%89/
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