海外EC調査部

独自の決済アプリで事業を拡大する南米EC Mercado Libre(メルカドリブレ)

海外EC調査部2022-06-14

メルカドリブレ Eコマース オンラインショッピング

概要

Mercado Libre(以下メルカドリブレ)はラテンアメリカ18か国に展開するECプラットフォームです。1999年にアルゼンチンにて設立、2007年8月にはNASDAQに上場をしています。
株価上昇率は過去5年間で900%近くになっています。
参考:マネックス証券 マネクリ 【米国株動向】急成長するeコマースのエッツィとメルカドリブレを比較検討

この記事では、中南米におけるECとメルカドリブレについて詳しく解説していきます。

中南米のインターネット普及率とEC事情

中南米地域のEC市場は、現在急成長しています。理由として挙げられるのは、スマートフォンの普及や配送インフラの整備が進められていることです。
例えばメキシコを例にすると、ここ数年でインターネット利用人口が年々増加しています。ネット利用の端末としてはスマートフォンが最も多く、次点でノートパソコンの利用と続きます。
さらにJETROによれば、2019年に実施したアンケートでは約半数が1年以内に越境ECを利用した事があると答えています。

そこで最も利用されているECが、今回紹介するメルカドリブレです。米国やアジア(特に中国)からの購入が多く、越境ECを利用する理由としては「国内で手に入らない商品だから」「外国の方が値段が安いから」との声が上がっています。
インターネットとスマートフォン利用率の増加、ECの普及率上昇、それに伴い物流インフラの整備が進む事を加味すると、中南米のマーケットにはまだまだ潜在的需要があると予測されます。

「メキシコのインターネット利用人口と全人口に対する利用率の推移」

メルカドリブレの魅力

メルカドリブレの魅力は、先述の中南米というマーケットと商品カテゴリーの豊富さです。

メルカドリブレでは、年間に約6,500万人もの購入者と1,200万人もの販売者、そして1秒間に533件以上のアクセス数と27件の注文が発生しています。

そして、以下のスクリーンショットはメルカドリブレ(アルゼンチン版)にある商品カテゴリーを自動翻訳にかけたものです。(元のサイトの言語はスペイン語)

取り扱っている商品は、日用品から農業機械やトラックなどの大型製品まで多種多様です。カテゴリーの中には「持続可能な製品」という分類があり、環境への配慮が伺えます。(以下画像参照)

中南米は、物流インフラの開発が遅れている場所もあり、流通している物の種類が少ない地域もあります。
そういった地域に住む人々にとって、多くのカテゴリから欲しい商品が見つけられるメルカドリブレは、非常に心強い存在です。

決済フィンテック Mercado Pago(メルカドパゴ)

また、メルカドリブレはマーケットプレイス以外にも様々な事業を展開しており、それらが成長と人気を支える大きな要素でもあります。

特に人気を集める要因として、独自の決済フィンテックアプリ『Mercado Pago(以下、メルカドパゴと表記)』の存在があります。

ラテンアメリカ地域では、コロナ禍以降銀行口座やクレジットカードを持たなかった人々の間に急速に口座開設の動きが広まりました。
きっかけはコロナ禍で支給される支援金や補助金などをスムーズに受け取るためでしたが、その後ネットバンク利用の便利さや信頼性を知り、日常的な預け入れや利用へと拡大しています。
特にブラジルでは過去類を見ない数の講座が開設され、口座開設に伴いクレジットカードを持つ人々も増えつつあります。

こういった動きに後押しされ、メルカドパゴの新規顧客数はブラジルだけで800万人にも達しました。(2020年)また、2021年12月にはメルカドリブレ上のすべての商品を仮想通貨での決済が可能になりました。

メルカドリブレによるこの決済システムの提供が、自社モールの発展だけでなく、キャッシュレス化の促進に一役買ったと言っても過言ではありません。
特にコロナは、人々の生活様式や習慣に大きな影響を及ぼしていることが、この一連の流れから良く分かります。


※フィンテック(FinTech)とは

金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語。

金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きを指す。(参考・引用:日本銀行 FinTech(フィンテック)とは何ですか?

ロジスティクスサービス Mercado Envios(メルカドエンビオス)

メルカドリブレに出品している販売者が『Mercado Envios(以下、メルカドエンビオス)』を選択すると、メルカドリブレの倉庫やフルフィルメント、3PLなどを利用できます。

加えて、簡易な伝票の発行や、荷物の追跡、紛失保証のサービスなども提供されています。配送インフラが確立されていないエリアでも、安心してスピーディーな配達が可能になります。
また、「メルカドエンビオス フル」プランの場合は商品は通常即日または翌日に発送されます。
出品アイテムページでも、メルカドエンビオスを利用していることが分かる表示が出ます。そのため、利用者から検索されやすくなり、結果商品の露出が増えるというメリットになります。

送料無料の場合には、スペイン語でそれを意味する「Envío gratis」という表示が緑色でつきます。

(引用:https://www.mercadolibre.com.ar/ofertas#nav-header Envío gratisという緑色のテキスト表記がある)

購入者にとってはメルカドエンビオスの商品は、「一定額以上で送料無料・早い配送」というイメージかと思います。実は、日本の楽天もメルカドリブレのこの物流サービスを参考に、送料無料ラインを設定したという経緯があります。楽天は2020年から「39ショップ(一定金額以上で送料無料)」というサービスを開始しています。

この他にも、広告ソリューション・クラシファイドサービスの「Mercado Libre Classifieds(メルカドリブレクラシファイズ)」、オンラインウェブストアソリューション「Mercado Shops(メルカドショップス)」などの事業も展開しています。

日本からの出店

日本からの出店については、現状難しい状況です。
出店者がメキシコ居住であることが条件なので、現地進出企業、又は現地にパートナーが必要となります。

今後のメルカドリブレと中南米

2017年のJETROの調査資料において、メルカドリブレのマティアス・フェルナンデス・ディアス氏は「越境 EC の拡大に積極的に組んでいる」と語っています。
また最新の調査で、中南米の7カ国(メキシコ、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)に進出する日系企業の6割は黒字を見込んでいると回答しています。
また日本製品の信頼性も高く、元々人気のあった日本発のアニメーションがネット配信サービスを経て数多く視聴できるようになった事を背景に、「日本のアニメに出てきた食べ物を食べてみたい」という声もあるそうです。

ブラジルやチリには日系人の文化やコミュニティもあり、日本製品が受け入れられやすい土壌と言えるのではないでしょうか。


参考:https://jp.wsj.com/articles/a-covid-19-silver-lining-in-latin-america-millions-of-new-bank-accounts-11624585410
ネット経済新聞 【〈南米ルポ〉楽天が参考にした「メルカドリブレ」のリアル】第2回https://www.jetro.go.jp/biznews/2017/10/5322b1439c18f311.html
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/01/2f10db1409bfbf10.html
https://www.brasilnippou.com/2022/220219-41colonia.html

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