リユース・越境 コラム

【2026年最新版】ハイブランドはなぜリユースを経営戦略に取り入れるのか?LVMHやRolexに学ぶ循環型ビジネス

リユース・越境 コラムリユース・越境 現場ガイド 作成 2026-08-10

これからリユース販売を始める方や、始めたばかりの方の中には、

「ハイブランドはなぜ中古市場に参入しているのだろう」「LVMHやRolexは、リユースをどのような経営戦略として位置付けているのだろう」「ブランド価値を高める考え方は、自分たちの事業にも活かせるのだろうか」

と感じている方もいるのではないでしょうか。

これまでハイブランドは、新品を販売することが主な役割と考えられてきましたが、近年では、LVMHやRolexをはじめとする世界のブランドが、自社製品の修理や認定中古品の販売、下取りサービスなどを通じて、リユースをブランド戦略の一つとして積極的に取り入れています。

本記事では、時計・ジュエリー・アパレルを代表するハイブランドの事例をもとに、リユースを「公式ブランドの循環サービス」として展開する背景や戦略を解説します。

世界のハイブランドは「リユース」を経営戦略に取り入れ始めている

なぜブランドが中古市場へ参入しているのか

Bain & Companyの調査によれば、世界のセカンドハンド・ラグジュアリー市場は2021年の330億ユーロから、2024年には480億ユーロへと拡大しました。

※出典:Bain & Company「Luxury in Transition: Securing Future Growth」

さらに、セカンドハンド・アパレル市場全体で見ても、2030年には3,930億ドルに達すると予測されています。

※出典:thredUP「2026 Resale Report」

もはやリユースは「不況対応の廉価チャネル」ではなく、高付加価値と循環性を両立する成長領域へと変わっていますが、ハイブランドが自ら中古市場に参入している最大の理由は、二次流通の主導権をブランド自身で回収するためといえます。

これまでは、使用された商品は一般のリユース店やプラットフォームに委ねられてきましたが、流通量が増えるにつれて、店舗ごとの真贋のばらつきや価格設定が、ブランドの価値そのものに影響を与えるようになってきたため、ブランド自身が価値の最終判定者となり、価格秩序や世界観を統制する動きが加速しています。

「循環型ビジネス」という考え方とは

ブランドがリユースを取り入れる背景には、「循環型ビジネス」への大きな転換があり、商品を「売って終わり」にするのではなく、長く使わせることそのものをブランド戦略に組み込むことが重視されています。

単なる中古品の再販ではなく、修理や下取り、素材の再利用などを組み合わせることで、顧客と長期的な関係性を築くことが可能であり、Deloitteの報告によれば、アメリカの消費者の40%を占めるZ世代のうち、64%が環境配慮型商品への追加支払い意思を持っています。

※出典:Deloitte US「Q1 2025 Retail & Consumer Trends」

新品を販売するだけではアプローチしきれない若年層との接点を拡大するうえでも、循環戦略は有効な手段となっています。

ブランドごとのリユース戦略

LVMHグループ

ラグジュアリー業界を牽引するLVMHグループは、循環戦略を単発の施策ではなく、グループ横断の経営インフラとして位置付けています。

  • LIFE360 / Nona Source

引用元:https://www.lvmh.com/en/commitment-in-action/for-the-environment/life-360-lvmh

環境パフォーマンスのロードマップ「LIFE 360」において「Creative Circularity(創造的循環)」を掲げ、2021年には、各メゾンのデッドストック素材を再販するプラットフォーム「Nona Source」を立ち上げているなど、素材段階から仕入れの循環化を進めているのが特徴です。

※出典:LVMH「LIFE 360」

  • Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン

引用元:https://eu.louisvuitton.com/eng-e1/stories/louis-vuitton-repairs

1860年の初修理記録に遡るほど、修理の歴史を持っており、現在では専用の修理アトリエ網を展開し、98%の修理をローカルで完結させています。

さらに、設計段階から修理可能性を織り込み、修理をクレーム対応ではなくブランド価値を次世代へ渡すためのサービスとして展開しています。

※出典:Louis Vuitton「Louis Vuitton Repairs」

  • Dior(ディオール)

引用元:https://www.dior.com/ja_jp?ref=milk.com.hk

「作品のレガシーを守る」ことをサステナビリティの柱に据えており、環境への配慮と高級感を両立させる言語設計の好例です。

  • Fendi(フェンディ)

引用元:https://www.fendi.com/jp-ja/

過去のコレクションのファーに第二の命を与える「Fur Restyling」を開始し、単なる補修にとどまらず、再設計して価値を上げるという発想を取り入れています。

時計ブランド

時計ブランドのリユース戦略は、「真贋・保証・認証」を入り口とする傾向が強く見られます。

  • Rolex(ロレックス)

引用元:https://www.rolex.com/watches/new-watches

「Rolex Certified Pre-Owned」プログラムを開始し、2年以上経過した中古時計を認定小売店経由で販売しています。

自社工房での真贋保証と完全整備を行い、2年間の国際保証を付与するなど、認定書を通じて信頼を売り、中古品でもブランドの価格秩序を守る仕組みを構築しました。

※出典:Rolex「Rolex Certified Pre-Owned」

  • Cartier(カルティエ)

引用元:https://www.cartier.com/en-us/home

公式のプレオウンド保証に加え、時計のトレードイン(下取り)を実施しています。

Watchfinder & Co.と提携し、対象の時計を査定したうえで、新しいCartier製品の購入へ充当できる仕組みを用意しているなど、下取りを通じて、販売後の顧客接点を次の購入体験へつなげている点が特徴です。

※出典:Cartier「Exchange Your Watch」

  • Omega(オメガ

引用元:https://www.omegawatches.com/

「Omega Vintage Store」を展開し、ブランドが承認したヴィンテージ時計を真正性証明書と2年保証付きで販売しており、古さをリスクではなく、歴史的資産へと昇華させています。

  • IWC

引用元:https://www.iwc.com/us-en

「IWC. Curated.」を通じて、歴史的な個体を公式が選定・修復・認証しています。

また、通常の2年保証を登録により8年へ延長する制度を設け、長期保有を支援しています。二次流通をヘリテージ体験へ転換するアプローチです。

  • Panerai(パネライ)

引用元:https://www.panerai.com/jp/ja/home.html

中古時計専門店Watchfinderと提携し、他ブランドを含む時計の下取りを、新規のパネライ購入へとつなげています。さらに、2023年以降に購入された全時計にブロックチェーン型の「デジタルパスポート」を付与し、真贋の不安をデジタル技術で解消しています。

ジュエリー・アパレルブランド

ジュエリーやアパレルブランドでは、素材の循環やストーリーの再編集といった切り口が目立ちます。

  • Tiffany & Co.(ティファニー)

引用元:https://www.tiffany.com/

使用する金、銀、プラチナをリサイクル由来へ移行する方針を打ち出しました。

また、洗浄・研磨・サイズ調整といった保有後のアフターサービスを常設することで、ジュエリーを通じた一生顧客化を図っています。

  • Patagonia(パタゴニア)

引用元:https://www.patagonia.com/home/

自社のブログから始まった「Worn Wear」プロジェクトを拡大し、店舗やオンラインでの中古衣料の販売と下取りを本格化させており、これまでの修理実績は13万件を超えました。

価格面だけではなく「使い続ける文化」への共感が、顧客のロイヤルティを高めています。

※出典:Patagonia「Our Quest for Circularity」

  • Gucci(グッチ)

引用元:https://www.gucci.com/us/en/

実験的なコンセプトストア「Gucci Vault」を開設し、ヴィンテージアイテムと新進デザイナーの作品を混在させることで、リユース品を「ストーリーのある一点物」として再編集しています。

中古品の再販を値引き販売ではなく、新しい発見体験へと変えています。

  • Burberry(バーバリー)

引用元:https://www.burberryplc.com/

レディースアウターやバッグの下取りと再販を、外部プラットフォームのVestiaire Collective経由で開始し、修理やリフレッシュ、レンタルといった循環施策を「ReBurberry」という一つの傘で発信し、ブランドの取り組みを分散させずに伝えています。

  • Stella McCartney(ステラ マッカートニー)

引用元:https://www.stellamccartney.com/us/en/

The RealRealとの提携を公式のタイムラインに明記しており、循環型ファッションの入り口としてリセールを採用し、外部への委託ではなくブランド戦略として発信しています。

ハイブランドは何を目指しているのか

公式リユースと一般リユースの違い

ハイブランドの狙いを理解する上で、まず押さえておきたいのが「公式リユース」と「一般リユース」の違いであり、両者は競合であると同時に、果たす役割が異なります。

  • 一般リユース

多様なブランドを横断して比較できる品揃えや、市場価格での流通量に強みがある一方で、店舗やプラットフォームによって真贋の精度、保証内容、状態基準、価格設定にばらつきが出やすいのが特徴です。

  • 公式リユース

ブランド本体や認定網が価値の最終判定者となり、真贋認証、販売前の整備や修理、公式保証の付与までを一貫して管理し、中古品でもブランドの世界観や価格秩序を維持します。

また、下取りや再販を通じて顧客との接点を継続できる点も強みです。

「商品が中古かどうか」ではなく、「誰が価値や基準を管理しているか」が最大の違いといえます。

ブランド価値を守る

ハイブランドがリユース市場へ参入する核心は、二次流通における「定義権」を握ることにあります。

一般的なリユース市場は流通量が多い反面、前述の通り店舗によって状態基準や価格設定にばらつきが生じやすい傾向がありますが、ブランドや認定網が直接出品条件や価格をコントロールすることで、中古市場における価格秩序を維持し、ブランドの世界観が毀損されるのを防ぐことが大きな目的です。

真贋保証と顧客体験

販売前の整備と真贋保証を徹底することも、重要な狙いの一つであり、特に時計やジュエリーは、専門的な工房での点検や純正パーツによる修理が求められますが、公式リユースであれば、基準が厳格に管理されるため、品質や真正性への信頼を高めやすくなります。

さらに、下取りや修理、保証の登録といったサービスは、購入時だけでなく、顧客との継続的な接点を生み出し、LTV(顧客生涯価値)の向上に直結します。

ESG・循環型経済への対応

社会的な圧力と規制への対応も、ビジネスを継続するうえで欠かせず、ESG投資が拡大する中、循環施策を持たないこと自体が投資家への説明リスクとなりつつあります。

PRIの2025年次報告では、ESG投資の署名機関が5,261に達しています。

※出典:PRI「2025 Annual Report」

また、EUの繊維戦略では、長持ちし修理が容易な設計が求められ、デジタルプロダクトパスポート(DPP)の制度化も進んでいます。

※出典:European Commission「EU Strategy for Sustainable and Circular Textiles」
※出典:EUR-Lex「Regulation – EU – 2024/1781」

ハイブランドは、環境への配慮というCSR的な側面だけでなく、規制や資源の制約を見据えた合理的な経営インフラとして循環型ビジネスを整え始めているのです。

日本のリユース事業者が学べるポイント

海外ハイブランドの戦略は、スケールこそ違えど、日本のリユース事業者にも応用できるヒントにあふれており、事実、国内の有力なリユース事業者の中には、すでに同様の仕組みをオペレーションとして実装している企業も存在します。

重要なのは、ハイブランドのようになろうとすることではなく、ブランドが重視し始めた論点をそれぞれの現場に翻訳することです。

具体的には、以下の視点が応用できます。

  • 修理(関係資産としてのメンテナンス)

修理やメンテナンスを利益率の低い原価として見るのではなく、顧客と長く付き合うためのLTV施策として捉え直すことが重要です。

  • 真贋保証(安心の見える化)

販売ページや店頭において、どのような基準で真贋判定や状態チェックを行っているのかを明示することで、見えない不安の低減につながります。

  • 認定制度(保証の明文化)

価格帯や商品の種類別に保証条件を明確にすることで、公式の「認定中古」に近い安心感を提供できます。

  • ストーリー(再価値化)

販売前の洗浄や整備のプロセス、その商品が持つ時代背景などをストーリーとして編集することで、単なる中古品に付加価値を持たせることが可能です。

  • 長期顧客化(再来店設計)

一度売って終わりにするのではなく、会員制度やLINEなどを活用して、修理や下取りのタイミングで再訪問を促す動線を設計することが求められます。

リユース事業者は、これまで「中古をどう売るか」に注力しがちでした。 しかし今後は、顧客が安心して長く付き合える仕組みをどう設計するかが、事業成長の鍵となります。

FAQ

ハイブランドはなぜ中古市場へ参入しているのですか?

ブランドの価値や価格の秩序を守るためであり、一般市場に任せきりにするのではなく、真贋や品質の基準を自ら管理し、二次流通の主導権を握る目的があります。

公式リユースと一般的なリユースは何が違いますか?

最も大きな違いは「誰が価値を最終判定するか」であり、公式リユースはブランドが真贋や整備、保証の基準を統制しますが、一般リユースは流通量に優れる一方、店舗ごとに基準や価格が異なる傾向があります。

LVMHはリユースを推進していますか?

はい、グループ全体で推進しており、「LIFE 360」や「LVMH Circularity」という戦略を掲げ、余った素材を再販するプラットフォームや、繊維のクローズドループ(資源循環)の構築に力を入れています。

認定中古制度とは何ですか?

ブランドが定めた厳格な基準に従って検査や整備を行い、公式の真正性証明や保証を付けて販売する中古品のことであり、ロレックスなどの高級時計ブランドで先行して導入されています。

リユース市場は今後も成長しますか?

中長期的な成長が期待されています。

世界のセカンドハンド・ラグジュアリー市場やアパレル市場は一貫して拡大を続けており、若年層の環境配慮への関心の高さも市場の追い風となっています。

まとめ

ここまでの内容を整理すると、以下のポイントが見えてきます。

  • ハイブランドは、リユースを単なる中古品販売ではなく、ブランド価値を高める「循環戦略」として経営に組み込んでいる
  • 真贋保証、修理、下取りなどの仕組みを通じて、顧客との長期的な関係性(LTV)を構築している
  • 日本のリユース事業者も、安心の仕組み化やストーリーの付加価値化が求められている

世界のトップブランドですら、いまやリユースを”中古市場への対応”ではなく”経営戦略”として捉えており、次に必要なのは、こうした市場の大きな変化を現場にどう落とし込むかです。

扱う商材や販売方針に合わせて、まずは真贋基準の明文化や、保証内容の再整理から進めると整理しやすくなりますので、海外事例を入口に、次は実務に変える知識を深めてみませんか。

リユース大学(https://wasabi.global/reuse-academy/)は、海外販売やリユース市場の動向を学ぶ場として活用でき、現場に直結する戦略や実務支援を通じて、事業の成長を後押しします。

詳細を確認しながら、扱う商材や販売方針に合う学び方を検討してみるとよいでしょう。

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