トランプの相互関税が与える海外配送への影響とグローバル思考のススメ
お知らせコラム海外EC調査部2025-04-17
目次
トランプ大統領の「相互関税」発表と業界への衝撃
2025年4月3日、トランプ米大統領による「相互関税」導入の発表が日本経済界に大きな波紋を広げました。特に越境ECを展開するリユース業界では、不安と混乱の声が広がっています。
現在は90日間の停止措置が行われましたが、停止措置が解除された場合どのような対策が必要になってくるのかコラム形式でお伝えします。（参考資料：https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250403/k10014768241000.html）
相互関税とは何か
相互関税とは、米国が貿易相手国に対し、その国が米国製品に課している関税率と同等、もしくはそれに近い税率を米国側も課すというものです。今回、日本からアメリカへの輸出品には従来の関税に加え24%の追加関税が発表され、例えば元の関税が5%の商品は合計29%となる計算でした。
しかし、発表直後の4月10日には、トランプ大統領が日本を含む多くの国に対し、相互関税の適用を90日間停止し、その間は一律10%の関税を適用する方針を示しました。
この措置は交渉の猶予期間とも言え、今後の動向が注目されています。
また4月12日に中国政府が、米国からの全輸入品に課す報復関税の税率を84％から125％に引き上げると発表したことから、米国ー中国間の駆け引きにも注目が集まっています。
越境EC事業者への影響
日本からアメリカへのBtoC越境EC市場は2024年時点で約1兆4,798億円※と巨大です。追加関税は原材料輸出だけでなく、EC小売事業者にも大きな影響を及ぼすことは避けられません。
※引用：経済産業省 令和５年度 電子商取引に関する市場調査 日本・米国・中国 3 ヵ国間の越境 EC 市場規模推計より
特に注目すべきポイントは以下の３点です。
Point1 配送手段による影響の違い
DHL・UPS・FedExなどのクーリエ便は追加関税の対象ですが、EMS（郵便）は現時点で適用外です。そのためEMSへの利用集中が予想され、既に長期化している配送期間がさらに遅延する恐れがあります。
Point2 800ドル以下の免税措置と中国・香港原産品の扱い
また、今回の相互関税の中でも、個別ケースが存在します。例えば、申告金額が800ドルまでの荷物に対する関税免除は継続されることや（自動車部品、鉄鋼関係製品は除く）、日本から輸送する製品であっても原産国が中国・香港の製品に限っては、2025年5月2日から追加関税が発生することも押さえておきたい点です。
Point3 申告基準金額の引き下げ
税関申告の「一般申告」基準が、従来の2,500ドルから800ドルに大幅引き下げられることも発表されました。税関を通る際には２種類の申告方法があり、さまざまな配送物を一括でリストにして確認される「簡易申告」と、インボイスを１件ずつ細かくチェックされる「一般申告」があります。この２種類は申告金額によって分けられており、従来は2500ドル以上の配送物が一般申告とされてきました。
しかし、今回の発表には一般申告の基準額引き下げも含まれており、2500ドルから800ドルへと大幅に引き下がりました。これにより、今まで簡易申告で税関を通されてきた800～2500ドルの配送物が、より一般通関として細かくチェックされることになります。そのため、税関でストップしてしまう荷物が増えると予想されます。またこれに伴い、一般申告に課せられるMPFという手数料（税関の使用料）も支払う必要が出てきます。ただし、これらの変更により税関現場での対応は混乱を極めるため、実際に運用されるまでは少し期間がかかることも予測されます。
今後のリスクと対応策
今回の措置は、日本の事業者にとって短期的な打撃となる可能性が高いですが、アメリカ側から見れば国内産業保護のための当然の対応とも言えます。立場を変えれば利益も変わるという国際ビジネスの現実を、改めて突きつけられた形となりました。
今後のリスクヘッジ策としては、
・複数の配送手段を日頃から使い分ける
・アメリカ以外の市場（欧州や東南アジアECモール等）への販路拡大
など、バランスの取れた経営戦略が求められます。ピンチはチャンスとも言われます。今回の変化を成長の機会と捉え、新たなビジネス戦略を模索することが重要です。
こちらの内容は2025年04月15日、日本ネット経済新聞に【海外ECモール諸国漫遊 番外編】トランプ関税、海外配送における抑えるべきポイントは？としてネット経済新聞でも掲載されておりますので、ぜひご覧くださいませ。