【クーボンの海外リユース探訪記】Vol.85 ロシア連邦編(2)
クーボンの海外リユース探訪記 作成 2026-08-17

この連載は、世界を股にかけた循環型社会を作るために、
弊社代表の大久保が見てきた海外のリユース情報や旅行記をお届けするコラムです。
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空港を出て、ホテルへ向かうため、地図アプリを開いた。そこで、違和感があった。現在地がおかしい。数十メートルのズレではない。まったく違う場所を示している。
街のインフラから読み解く
中古ブランド市場の需要

スターバックスコーヒーの跡地に立つスターズコーヒー
現地の人によるとモスクワでは普通だそうだ。ウクライナ軍によるドローン攻撃への対策として、重要施設周辺を中心にGPSが意図的に妨害されることがあるという。
日本では、地図アプリを開き、行きたい場所を入力すれば、徒歩でも電車でも車でも、ほぼ迷わず到着できる。しかしモスクワでは、その当たり前が崩れていた。戦争はニュース映像の中だけで起きているのではない。日常的なインフラにも影響を与えていた。
GPSが狂う街
新人タクシー事件
GPSが狂うと困るのは旅行者だけではない。ホテルから約10分の場所へ向かうため、配車アプリでタクシーを呼んだ。料金も表示され、車もすぐに来た。ここまでは非常にスムーズだった。ところが、乗ってから様子がおかしい。運転手はナビを何度も見ている。右へ行く。左へ行く。また戻る。さっき通った交差点をもう一度通る。明らかに目的地から離れていく。運転手の表情も徐々に不安そうになっていった。
モスクワでは、ベテランドライバーほど土地勘で走れる。道路の流れや地名でルートを修正できる。一方、新人はナビに頼る。ナビが狂えば、迷子になる。10分で着くはずの場所へ、約1時間のドライブになった。
最後に運転手は、申し訳なさそうな顔で言った。「ここまでしか行けない」。降ろされたのは、目的地とはまったく違う地下鉄駅だった。しかし、こちらも怒る気にはなれなかった。運転手もまた、GPSが狂う街の被害者だったからだ。
現地の人にこの話をすると、みんな笑いながら同じことを言った。「新人タクシーには気を付けて」。海外出張の注意事項はいろいろあるが、「GPSが狂うので新人タクシーに注意」という項目は、これまでの人生で初めてだった。
看板だけが変わった
外食ブランド
街中に出ると、ブランド撤退の影響は、ラグジュアリーブランドだけではないことがわかる。飲食チェーンにもはっきり表れている。ただし、単に店がなくなったわけではない。撤退したグローバルブランドの工場や店舗を、ローカル企業が引き継ぎ、似たメニュー、似た味、似たロゴで営業を続けている。
たとえばコカ・コーラは、ドブリー・コーラへと置き換わった。撤退した工場で、同じような原料や製造体制を使って作られているため、味はかなり近い。現地で飲むと、看板が違うだけで中身はほとんど同じではないかと思うほどだった。
スターバックスコーヒーの後には、スターズコーヒーが広がっている。ロゴの雰囲気も、店舗デザインも、メニュー構成も、どこか見覚えがある。現地では「スターバックスがなくなった」というより、「名前が変わって営業している」という感覚に近いのかもしれない。
他にも、ケンタッキーはロスティクスへ。これもメニュー構成は非常に近い。元の運営体制やレシピの流れを引き継いで、ローカルブランドとして運営されている。
ここで重要なのは、ロシアではブランドが消えても、工場、人材、設備、レシピ、消費者の習慣が残っているという点だ。つまり、看板だけが変わり、生活は続いている。
しかしラグジュアリーブランドの場合、同じようにはいかない。バッグや時計、アパレルの「本物」は、看板を変えたら意味がない。だからこそ、リユースが重要になる。
海外視察で重要なのは、現地の商売を見ることだけではない。街のインフラ、移動のしやすさ、アプリの使われ方を見ること。その積み重ねが、市場の理解につながる。
第638号(2026/08/25発行)25面
出典:リユース経済新聞「【クーボンの海外リユース探訪記】Vol.85 ロシア連邦編(2)」

株式会社ワサビ
代表取締役 大久保裕史(オオクボ・ヒロシ)
株式会社ワサビ 代表取締役。22歳で起業し、携帯ショップや飲食店など多岐にわたる事業を経験。その後、前職での役員経験を経て独立。リユース業界向けの在庫連動システムを開発し、複雑な仕様にも泥臭く対応することで流通業界トップ層の圧倒的シェアを獲得。「世界一の流通支援企業」を見据え、ミャンマーやベトナムなどグローバル展開も精力的に進める。社会に必要とされるビジネスを追求し続けるシリアルアントレプレナー。
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