【クーボンの海外リユース探訪記】Vol.84 ロシア連邦編(1)
クーボンの海外リユース探訪記 作成 2026-08-17

この連載は、世界を股にかけた循環型社会を作るために、
弊社代表の大久保が見てきた海外のリユース情報や旅行記をお届けするコラムです。
最新の連載はリユース経済新聞の紙面で読むことができます。
国の第一印象は空港で決まることが多い。空港の匂い、入国審査の空気、税関職員の表情、タクシーの客引き。どれも、その国が持つ温度を一番最初に教えてくれる。今回は、「待つこと」だった。
非友好国の現実
入国審査に現れる政治の陰
ロシアへようこそは
5時間半後だった

シェレメチェヴォ国際空港の様子
モスクワ・シェレメチェヴォ国際空港。入国審査へ向かうと、周囲には中国から来た旅行者の姿が目立った。彼らはパスポートを見せると、次々とゲートを通過していく。まさに、するすると入っていく、という表現がぴったりだった。
一方で、私の番になると、係官はパスポートを確認したまま「少し待って」と席を立った。
海外ではよくあることだ。何か確認が必要なのだろう。そう思って待った。ところが、1時間経っても呼ばれない。2時間経っても進まない。追加質問もない。別室に呼ばれるわけでもない。荷物検査をされるわけでもない。ただ、待つ。
3時間を過ぎる頃には、さすがに少し笑えてきた。目の前ではロシアの友好国である中国の人たちがスムーズに入国していく。その横で、非友好国に分類されている日本のパスポートを持つ私は、理由も説明されないまま待たされ続ける。政治というものは、ニュースの中だけにあるのではない。空港の列の進み方にまで現れるのだと、身をもって知った。
結局、空港を出られたのは到着から5時間半後だった。最後まで明確な説明はなかった。もちろん、すべてが「非友好国」扱いのせいだと断定するつもりはない。ただ、この体験は当時の国際環境を、これ以上ないほど分かりやすく教えてくれたと思う。
普段、私は越境ECや海外販路の話をしている。国を越えて商品を売る、データをつなぐ、物流をつなぐ。ビジネスの現場では、できるだけフラットに考えようとする。しかし、現実の国境には政治がある。税関がある。外交関係がある。そして、そのすべてはビジネスの前提条件になる。ロシア視察は、そうした当たり前の事実を、入国審査という形でいきなり突きつけてきた。
ブランドが消えた街
リユースが正規ルート
モスクワの中心地を歩くと、街の雰囲気に不思議な空白を感じる。人は多い。レストランもカフェも賑わっている。地下鉄も混んでいる。都市としての活気は十分にある。しかし、何かが足りない。その理由は、しばらく歩いているうちに分かった。ブランドの看板が少ないのである。
かつてモスクワの一等地を飾っていたラグジュアリーブランドの多くが撤退した。ブランド街からブランドショップが消えると、ここまで印象が変わるのかと驚いた。
だが、需要が消えたわけではない。ロシアのブランド志向は強い。むしろ、新品が簡単に手に入らなくなったことで、本物のブランド品への欲求は高まっているように見えた。
では、ロシアの人々は実際にどこで中古品を売買しているのか。それこそが、百貨店のリユース販売であり、ブランドリユース専門店であり、オンラインの中古品プラットフォームである。ロシア最大級のC2CプラットフォームAvito、越境ECのJoom、そして中国オークションに増えるロシア人バイヤーを通じて、リユースが「正規ルート」になる国の実態を見ていきたい。

経済制裁によってブランドショップは営業していない
第637号(2026/08/10発行)27面
出典:リユース経済新聞「【クーボンの海外リユース探訪記】Vol.84 ロシア連邦編(1)」

株式会社ワサビ
代表取締役 大久保裕史(オオクボ・ヒロシ)
株式会社ワサビ 代表取締役。22歳で起業し、携帯ショップや飲食店など多岐にわたる事業を経験。その後、前職での役員経験を経て独立。リユース業界向けの在庫連動システムを開発し、複雑な仕様にも泥臭く対応することで流通業界トップ層の圧倒的シェアを獲得。「世界一の流通支援企業」を見据え、ミャンマーやベトナムなどグローバル展開も精力的に進める。社会に必要とされるビジネスを追求し続けるシリアルアントレプレナー。
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