女性向けハイブランド品に特化したリセールプラットフォーム Tradesy(トレードシー)
海外EC調査部2022-01-13
目次
概要
Tradesy(以下トレードシー)はアメリカのハイブランドファッションアイテムのリセールプラットフォームです。トレードシーの特徴はハイブランドのレディーズファッションのみ取り扱うことです。
2009年にアメリカのロサンゼルスで創立され、女性ハイブランド品に専念して成長してきました。
創立者Tracy DiNunzio(以下トレシー・ディヌジオ)は当初、Recycled Brideというウェディングドレスや関連アイテム専門のリセールプラットフォームを作りました。
その後販売が好調だったため、2012年に事業を拡大し、今のトレードシーを設立しました。
トレードシーもほかのベンチャー企業と同じように、ベンチャー投資者から何度か資金を集めて事業を拡大しています。
2015年に、当時同業のライバルだったハイブランド品リセールプラットフォームShop Hersを買収。
そして、2018年にクローゼット顧問サービス(人々にどんな服やアクセサリーを着るかについてアドバイスしたり、ブランドを紹介したりするサービス)会社Fitzを買収し、その顧問サービスを自社の一部にしました。
Vestiaire Collective(ヴェスティエール コレクティブ)との合併
2022年3月15日、トレードシーは、ヨーロッパファッション界のリセールEC Vestiaire Collectiveに買収され、合併しました。
両社合併後の規模は、2,300万の顧客数、500万のアイテム数、および10億ドルを超える総商品価値となります。
Vestiaire Collectiveはフランスのパリ本社を起点に、その他アメリカ、イギリス、香港、シンガポールにも認証センター(ハイブランドの本物鑑定センター)とロジスティクスセンターを構えており、80か国を超えるユーザーに商品を提供する超大型リセールECです。
Vestiaire Collectiveの特徴は認証技術で、購入時に認証オプションを選択した顧客は認証センターでの真贋鑑定・品質検査を事前に受けた商品を受け取ることができます。
トレードシーはこの買収により、更に認証の専門知識とグローバルな供給能力を活用する機会を増やしていくと予想されます。
ビジネスモデル
トレードシーは、以前記事でご紹介したPoshmark(ポッシュマーク)やOfferUp(オファーアップ)のようなPtoPオンラインリセールプラットフォームと同じように、アプリで簡単に出品ができます。
出品された商品が売れたら、トレードシーから送料前払いの配送キットが届きます。
商品をそのキットに入れて発送したら完了です。
もし商品に何か問題があったら、真贋や返品はトレードシーが対応します。
販売手数料が最終販売価格の19.8%になります。
女性創立者ならではの視点
洋服いっぱいのクローゼットを見ると、「こんなにいらない服があるの?」と気づいた女性がたくさんいますね。
捨てるのも嫌だし、ずっとクローゼットに掛けるのも悩みを増やすだけかもしれません。
特にハイブランド品の場合は、高い値段で買ったから着ないととても無駄になる気がします。
しかも新しいハイブランド品を買うときに予算を超えることがよくあります。
どうすればもう着ない服やアイテムを手軽にお金に変えられるでしょうか?
創立者トレシー・ディヌジオは、女性として服などのファッションアイテムに対する悩みや憧れなどの複雑な思いを熟知しています。
より手軽で自由にハイブランド品を購入や販売できるオンラインサービスを作りたいという思いも、創業のモチベーションだと思います。
彼女は自分のファッションセンスと、テクノロジーにある可能性を見抜く洞察力をよく結合してこそ、活力のある事業を築いてきました。
ハイブランド品専門
一般的に、ハイブランド品がその時代のファッショントレンドを代表したり、リードしたりしています。
ハイブランド品の材料も厳選され、デザイン感も満点で質も良く、確かにとても価値がある良い商品ですが、高価のため消費層が一部の人に限られているというイメージがあります。
しかし、トレードシーのようなリユースの概念によって作られたオンランリセールプラットフォームがこの状況をだんだん変えつつあります。
中古品のため、トレードシーでは市販価格より低い値段でハイブランド品を購入できます。
ときには最大90%オフの商品もあります。
ハイブランド品の高値段という一番のハードルを下げると、より多い消費者の購入体験が可能になりました。
しかも、商品をリサイクルするので、廃棄ゼロの循環型社会にも貢献しています。
持続可能な目標
もともと持続性がリユース業界の体質なので、もっと便利な手段でもっと多くの商品をリサイクルさえできれば、廃棄する商品が少なくなります。
ハイブランド品も同じです。
ThredUP(スレッドアップ)を紹介した記事のなかで書いてあるように、2018年Burberry(バーバリー)が価値3780万ドル(約43億円)の過剰在庫を焼却したことがニュースで報道されて以降、ハイブランド企業の手法が社会から批判を浴びていました。
もし廃棄しなければならない商品がなんらかの方法でもう一度リサイクルに入ったら、環境への負担も減るでしょう。
トレードシーも便利でハイブランド品相応の高級感がある販売と購入体験を提供するプラットフォームをもって、こういった目標の達成に力を入れています。
日本からの購入と出品について
トレードシーによると、アメリカの住所のみ取り扱うので、海外からの購入や出品はできません。
まとめ
グローバリゼーションによって、ファッション産業は急成長し、全世界の経済発展に貢献しています。
しかし、生産過程での資源の過度使用や、環境への汚染などの問題も目立って、深刻になっています。
持続可能な未来のために、人々がこの産業の変革を求めています。
近年、大手ファッション企業もそういう方向に動き始めました。
その一つは、リサイクルへの注目です。
2021年グッチやサンローランの親会社Keringグループが、リセールプラットフォームVestiaire Collectiveに2.16億ドル(約249億円)を投資しました。
リユース市場規模が拡大し、利益が出せるのもこの投資の動機の一つと見られますが、結果として、リサイクルへの転換に力を入れたのも事実です。
トレードシーのようなハイブランド品に専念するプラットフォームがリサイクルの概念を持ち、販売者と購入者に便利なツールを提供し続けていけば、ファッション業界の在り方を変革する力になると信じています。